満月と新月
追いかけて、追いかけられ
キュモール達を追いかけ、ひた走っていたが、気配すらなくなってしまった。
「だめねん。逃がしたわってばぁ」
ベティはため息をついた。
「もうこのまま港へ行った方が良さそうだな」
ユーリが言う。
「そうだね、ヘリオードはさっきのでゴダゴタだろうし」
カロルが頷いた。
「え?キュモールはどうするんです!?放っておくんですか?」
エステルが声を荒げた。
「街の人々を解放した。それで仕事は完了。キュモールの手がかりはない。追えない。違うかしらん?」
ベティは諭すように言う。
「でもまだ近くにいるかもしれません!」
「草の根掻き分けて探せってぇ?それに、フェローの事はもういいのん?」
ベティはため息をついた。
「そ、それは…」
エステルは俯く。
「あなたのだだっ子に付き合うギルドだったかしら?凛々の明星は」
ジュディスが胸に手を当て、言った。
「ごっごめんなさい。わたしそんなつもりじゃ……」
「キツイ事言うようだけど、エステルが皇帝になったら、あなたの言動ひとつで、国が振り回される事になるのよん。もう少しよく考えなさい」
ベティはなるべく角を立てないように言った。
「ま、落ち着けってこった。フレンに任せときゃ間違いないさ」
ユーリは眉を下げた。
「ちょっと、フェローってなに?凛々の明星?説明して」
リタが割り込む。
「そうそう、説明して欲しいわ」
いつのまにかレイヴンが現れ、言った。
「………なによあんた」
リタが睨む。
すっかりレイヴンに対して、不信感を抱いている。
天を射る矢だというのに、いたたまれない。
「なんだよ。天才魔導士少女。もう忘れちゃったの?レイヴン様だよ」
「な、に、よ、あんた」
「だからレイヴン様……んとに、怖いガキんちょだよ」
リタがずっと、ものすごい形相でレイヴンを睨んでいたので、彼は頭をかいた。
「んで?何してんだよ」
「お前さん達が元気すぎるから、おっさんここまで来るハメになったのよ。とりあえず、トリム港の宿にでも行って落ち着こうや。そこでちゃんと話すからさ。おっさん腹減って……」
レイヴンがお腹を抑えて言う。
それすらも不審で、リタはさらに彼を睨みつけた。