満月と新月 | ナノ
満月と新月



ボク女の子



とりあえず、服屋へと来たユーリ達。
カロルを可愛く変身させるため、洋服を探す。


「男の子のハートを射止めるための、女の子のドレスないかしら?」

ジュディスは意気揚々と店員に話し掛ける。

「ハートを射止めるってデートかい?」

愛想良く店員が笑う。
「ええ、そうよ。そうね、例えば……」

ジュディスがカロルを見る。

「……え、その子が着る……って……その子……男の子……だよね?」
店員は訳がわからないという様子だ。


「女の子には見えないでしょ」


カロルがムッとしたように言う。
「はあ、まあ……なんでオレが怒られてるんだ?これなんかどうかな?」


店員はジュディスに服を広げて見せた。

「あら、いいわね。これ着てちょうだいカロル」

ジュディスは嬉しそうにカロルに洋服を差し出した。


「ねえ、そこまでして、これってやんなきゃいけないこと?」


カロルはユーリをジト目で見た。
「これカロル先生の作戦じゃないか」
ユーリは呆れたように言った。

「確かに……そうなんだけど……はあ、こんなときにリタがいてくれれば……」

カロルはぶつぶつと呟き、ジュディスから洋服を受け取り更衣室へと消える。





着替えたカロルは恥ずかしそうに更衣室から出てきた。

ピンクを基調とした、上品でかわいらしい格好だ。


「髪型、そのままじゃマズいわねん」

ベティはカロルの髪を下ろし、リボンを結んだ。

どう見てもかわいらしい女の子だ。


「これで準備万端。さあ、行くわよ」

ジュディスが言う。
「ちょっ……本当にそれで行くつもりか?」
ユーリはジュディスに言う。
「え?どこかおかしいかしら?」

「どこかって全部…………ま、いっか」

「とてもカワイイですから絶対成功しますよ。行きましょう」
エステルの目はキラキラと輝いている。





広場へと戻ってきたユーリ達はカロルを残して、物陰に隠れた。

カロルはモジモジしながら、見張りの騎士へ近づいて行く。


「あ、あの!そちらの騎士様!」

カロルが上目遣いで話し掛ける。



「うまいわねん、カロル」
ベティはニヤニヤと様子を伺う。



「ん?私のことですかな?」

騎士はカロルを見た。
「は、はい……すこしこちらにきて …わたしとお話ししませんか?」
「い……いえ、私は持ち場を離れるわけにはいきません」

「そ、そんなぁ……」

カロルは羞恥心と、ここまでやって断られたことに少し目が潤む。


「す、すみません、そんな泣かなくても……」

騎士はしまった、という顔をした。


「わかりました。お時間作りましょう、あなたのために」


「ま……まあ、嬉しい……!じゃあ、こちらへ」

カロルが魔導器の裏に騎士を連れ込む。
ユーリは素早く騎士の後ろに回り込むと、気絶させた。



「……結局、最終的には殴り倒すんだね」

カロルがため息をつく。
「これ以上は、おまえに望めないだろ」

「な、何を……?」

「いや別に……さぁ、さっさと着替えてこい」

「あ、うん」
カロルが服屋に走って行った。



「この騎士、ちょっと危ないわねん。子どもに変なこと考えるなんて」

ベティは騎士の兜を脱がして身ぐるみをはいでいく。

「なにしてんだ?」

ユーリがベティを覗き込む。

「はい、これ着て。この方が下で身動きとりやすいでしょん」

ベティはユーリににっこり笑った。
「しょうがねぇな、にしても、よりによって騎士かよ」
ユーリはそれを受け取ると、その場で着替える。


「ま、この方が何かとごまかしきくからいっか」


「正直似合ってないわねん。ナイレン隊の隊服は違和感なさそうなのに」


ベティはクスクス笑う。

「悪かったな」

ユーリはため息をついた。


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