満月と新月 | ナノ
満月と新月



2人の距離



ベティは宿で、銃も剣も外し、ブーツを投げ出しベッドに寝転んでいた。

紅の絆傭兵団が居たということは、黒幕らしき隻眼の大男とは間違いなくバルボスの事だろう。


ただ、ラゴウという執政官と繋がっているというのが、どうにも解せない。

恐らく、海凶の爪もラゴウが雇い主なのだろうが、なぜ最初にフレンは狙われたのか‥‥もしかすると、帝国内の揉め事だろうか。
騎士団と評議会の対立は今に始まったことではない。

ベティは、ラゴウもバルボスも単に踊らされているだけなような気がして、嫌な予感がするのだ。
思案しながら、ゴロゴロしていたが、雨の日はどうも辛い。
次第に意識は眠りの闇へと落ちていく。





フレンはユーリはもちろんだが、ベティと会うのはかなり久しぶりだった。

巡礼に出る前に、一度会ったきり彼女には会っていなかった。
2人の出会いは不思議なもので、誰か別の騎士の部屋に忍び込もうとした彼女が、間違えてフレンの部屋に入って来たのが始まりだった。

真面目なフレンが、彼女を捕らえなかったのは奇跡と言ってもいいだろう。
ベティにまた来てくれと頼んだのはフレンだ。
彼女はびっくりした顔をしていたが、すぐに笑って手を降ると窓から降りて行った。

思えば既に、その笑顔に惚れていたのだ。
窓の鍵もそのまま閉めることはできなかった。
次の日、ベティはフレンが鍵を開けておいた窓から入り、ベッドで警戒することなく眠っていたのだから驚きだ。


フレンはそんな過去を思い出しながら、コンコンと扉をノックした。


「ベティ?居るかい?」

少し待ったが、返事がないので、ノブを回してみる。と、扉はあっさりと開いた。

ベティは奥のベッドですやすやと寝息を立てていたので、さすがに彼は苦笑いを浮かべた。
無用心にも程がある。



フレンは中にはいると、後ろ手で扉の鍵をかけ、ベティのベッドまで歩いて行き、剣と鎧を外して腰をかける。

彼女の寝顔はあの日と同じで意識せずとも微笑んでしまう。



しかし、不意に彼女の首筋に咲く、赤い蕾に目が留まり、彼は顔をしかめた。

見間違いかと良くみるが、やはり間違いではない。
つい最近つけられたような跡だ。


「やっぱり……ユーリ…か」

フレンはムッと眉を寄せ、そして、彼女の首筋に噛み付いた。

「んっ……フレン?」

眠りを妨げられたベティは、身じろぐ。

「ユーリとシたのかい?」

顔を上げたフレンは酷く悲しそうな顔で彼女を見つめるが、ベティは目を見開き、何も答えない。

「いや…君にとって、僕がそんな事を言うべき立場じゃないのはわかっているんだ…でもその、ユーリと、って言うのはやっぱり……」

彼女は、言い訳を並べながら起き上がろうとしたフレンの腕を引っ張り、勢いよくベッドに押し倒した。
彼が下から見上げるベティは、不適に笑っていて感情が読めない。



「悔しいんだ?」

彼女はいたずらっぽく耳元で囁いた。
そしてフレンが何か言いかける前に、彼の唇を塞ぐ。

そのまま舌を割り入れ、ベティはフレンの舌を絡め取り、弄ぶ。

何度も口付けて次第にそれは、激しさを増して行く。

フレンは彼女の腰を抱え、ぐるりと体を捻る。
白いシーツに金の糸が散った。



「んんっ……ふ…ぁ…」

唇を離すと、熱っぽいベティの瞳がフレンを見つめる。
フレンは彼女の耳に口付けて、首筋に舌を這わせた。

「あっ」

同時に、普段は聞けない彼女の甘い声が上がる。
それは一気にベッドの上の熱をあげてしまう。

「君はズルいよ……僕のものにはなってくれないのに、いつだって僕を受け入れる……」

「そう思うなら、抱かなければいいじゃない」

ベティはフレンの頭を撫でる。

「それでも君が欲しい……」

フレンはまた彼女に口付け、上着を脱がせる。
露わになった彼女の体は艶かしく、とても美しい。

ふっくらとした胸は、フレンの大きな手で包んでも余る。


手を動かしながら、硬くなったその突起を舐め、脇をくすぐった。

「はぁ…ああっ…」

ベティがびくりと腰を浮かせたので、素早く左手を滑り込ませ、抱きしめるように引き寄せる。
執拗に舐めれば、彼女は快感を探して、腰をくねらせてくる。

「あっ…ふぁ……」

脇腹に舌を這わせながら、彼女のスカートを脱がせて内腿を優しく撫でていく。

「あ、あぁ…」

焦らすように内腿を舐め、下着の上からすっと指を這わせた。

「んっ汚れるから……脱がせて…」

ベティは呼吸が荒い。
そのまま下着を脱がせ、フレンも上着を脱いだ。

よく鍛えられた身体は、しっかりと締まっていて、所々に騎士らしい傷がある。
ベティはすっと彼の体に指を這わせた。


「そんな風にいやらしく触るなんて、お仕置きだね」

フレンは既に濡れている彼女の中に、いきなり二本の指を奥まで入れた。



ぐちゅっ

卑猥な音が響く。

「ひゃぁっ!あぁっ!フレンっっ…だめぇ…」

ベティは生理的な涙を流すので、フレンがそれを舐めとった。

「僕の手でもっと気持ち良くなって…」

フレンは中をこする様に刺激するので、彼女の中は否応なしに愛液を零す。

「あぁ!お願いゆるしてぇ…」

ぴちゃ

くちゅ

やらしい水音が部屋に響く。
フレンは指を入れたまま、撫でるように外を舐める。

「あぁ……お願いっ!ふれ…ん…ああっイクっ」

ベティの強請る声に、フレンは裏切りもせずさらに激しく攻め立てる。

ぢゅぼっ
ぢゅるっ

彼が勢いよく吸い上げるので、彼女の快感は途端に身体中に走った。



「あああああああっ!!」


ベティの腰はがくがくと震え、気持ちよさに涙を零す。
息もかなり上がっていて、瞳は物欲し気に色っぽくフレンを見る。


「このままいれてあげるよ」

彼も熱っぽく見つめ返して、乱暴にズボンと下着を脱いだ。


ぐいっとベティの足を持ち上げ、自分の肩に乗せる。

痛いくらい熱を持った自身をあてがうと、強引に奥まで押し込んだ。




「ひぃあぁぁぁっ!」

ベティの腰が反り返り、表情は取り繕う様子もなく、歪み頬が上気し始める。

「っっ狭いね……」

フレンはゆるゆると腰を打ち付け、探るように彼女を快楽へと導いていく。



「あっあっあぁっ」

ベティは涙をながしながら、いやいやと首を振る。

「すっごくいいよ…ベティ…」

パンパンと肌を打ち付け合う音が響き、次第に腰の動きが激しくなっていく。




足を降ろし、ベティを抱きかかえるように覆いかぶさると、彼女もフレンの背中に手を回した。

彼女の鳴き声は絶えない。
外へ聞こえてしまうのではないか、というフレンの僅かな心配は、彼女の乱れた姿にすぐに立ち消えた。


「ふ、れ…ん…きもちっ…」

「僕もだよ…ベティ…」

ベティのイイ所をフレンはよく知っている。
執拗にそこばかり責め立てれば、彼女が何度もイク事も。

「あぁイクっっ!イっちゃうよぉっっ!」

彼女はきゅっと目を瞑り、フレンの肩に爪痕を残す。

「僕も…もう…一緒に……」

フレンは腰を激しく動かす。
耐えきれず軋みはじめるベッド、繋がった部分からはぬちゃぬちゃと水音が鳴る。

「あぁぁぁぁぁ!っあぁあっ!」

「イクよっベティっっ!あぁっ!」


ひとつの欲求を解き放ったフレンは、その時特有に眉を寄せる。
ベティの中に勢いよく熱が流れ込んでくる。

「はぁっ…あっ…はっ…」

2人は繋がったまま抱き合った。

「フレンが、中に出すなんて珍しいね…やっぱ独占欲の現れかなぁ」
「そうかもしれないな…すまない」
ベティはぎゅっと抱きしめる力を強くした。





フレンは彼女の隣に寝転んで、ごく自然に腕枕をした。

「何故、ソディアにあんな風に怒ったんだい?」
「あぁ、あれ?ちょっと言い過ぎたね。彼女、引いちゃったんじゃない?」
「いや、最もな事を言われたと反省していたよ」

フレンが笑う。

「本当?わかってくれてよかったわ……あれは、ナイレンの受売り」

ベティは目を閉じて思い出すように呟く。

「ナイレン隊長の?」

フレンは首ごと視線を彼女の方に向けた。

「そう、簡単に剣を抜くなと教えてくれたのはあの人。もう教えを乞うことはできないけれど、ナイレンが私に教えてくれたことは、今でも私の道標……」
「そう…だね…」
フレンは優しく笑った。

「それにしても、ユーリがナイレンの武醒魔導器を持っていたのには、フレンの剣以上に驚いた!」
「今はユーリの話はしないでくれ‥」
彼はぎゅっとベティを抱き寄せ、その表情は子供っぽく膨れている。

「これは、フレンに会ったら1番に言おうと思ってたんだけど……」

彼女は苦笑いをして、いつもとは違う彼を抱きしめ返した。


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