満月と新月
ウサミミギルド
「ほほう……おぬしら、なかなか見所がありそうじゃ。どうじゃ?ワシのギルドの宣伝を手伝わんか?」
ユニオン本部のロビーで1人の老人が声をかけてきた。
「ん?宣伝ね、ギルド凛々の明星への依頼って事でいいなら、引き受けるぜ」
「カロルに聞かなくていいの?」
ベティは怪訝そうにそう言ったのだが、ユーリは気にした様子はない。
「おお、そうかそうか。ならばそのようにしてくれ」
老人は嬉しそうに笑う。
「で?具体的にどう言うギルドなのかしら?」
ジュディスが説明を促すと、彼はコクリと頷いた。
「ワシのギルドはウサギさんをただひたすらに愛でるという、なんともすばらしいギルドじゃ!」
楽しそうにそう言ったのだが、三人は首を傾げる。
「お前さんらにはその広報として、このラブリーウサギルドのことを世に触れ回って欲しいのじゃ!難しいことはありゃせん。このバッヂをお前さんに預ける。ラブリーウサギルドの知名度が上がるごとに、特別ボーナスをやろう」
「要は、バッヂつけて宣伝すりゃぁいいんだろ?」
「んむ。では広報活動にいそしんでくれたまえよ!広報バッヂと、お前さんらの就任記念にこれをやろう。では頼んだぞ!」
手渡されたのは可愛らしいウサギのバッヂと、ウサミミ。
「「……………」」
「あら、いいわね。私付けちゃおうかしら」
「え!なんかそれは似合いすぎるわねん……」
ベティのつぶやきもなんのその、ジュディスはウサミミを装着。
宛らバニーガール。
ーー数日後
「おう、お前さんらか。おかげでナウなヤングにギーサウサドーギルもバーフィーじゃ!だからこれからもチリバツバリガンでゴーゴーなのじゃ!さあモアモアゴーレッツじゃあー ファイッ!ファイ!」
そう言ってまた差し出されたのはウサミミ。
今度はカロルに着けさせる。
「これも、依頼のうちなら仕方ないよね……」
カロルは大きくため息をついた。
ーーそしてまた数日後
「お前さんたちか!ラブリーウサギルドもかなりの会員数になったわい!では恒例のごほうびじゃ!うけとれい!」
そう言って老人はベティにウサミミを渡した。
ジュディス、カロルとつけているので、無言で彼女もウサミミを頭に付ける。
「金髪娘がするうさみみはまた格別じゃのう ふおっふおっふおっ!もうちっとだけわしのためにがんばっておくれ」
老人は楽しげに笑った。
「………ウサギを愛でる……?」
ベティは頬を引きつらせて笑う。
「ある種、これも『ウサギさん』じゃないかしら?」
そう言って笑うジュディスは至極楽しげで、ウサミミも似合っている。
「おいおい、お前ら、なんのギルドだよ。みんなしてんなもんつけて」
「次はユーリの番だと思うよ……」
カロルのため息とともに、ラピードもため息をついた。
ーーそれから一週間後
「ついに……ついに会員数が10人になったぞいーーーーー!!もうこれで廃部、いや、廃ギルドの危機もなくなったわい!お前さんには感謝感激雨あられじゃ!では、ファイナルごほうびのとっておきのうさみみじゃあ!」
スッと差し出された、最後のウサミミ。
着ける人はもちろん決まっている。
「………………………………」
ユーリは無言のままだ。
「じ、10人ってのは、ね。あははははは」
「そんなとこだと思ってはいたけれど、随分かわいいスケールのお話だったのね」
「じゃあ、ユーリも付けないとねん」
「誰がつけるかあああああああ!」
ユニオンのロビーにユーリの声が虚しく響いた。