満月と新月
3・protest
「会いに行かなかったの怒ってんのか?」
ユーリは見張りの騎士も通り過ぎ、エステルの家の敷地も出て、外の門で止まった。
「別に怒ってません」
ベティはむっとした顔でいうので、ユーリはため息をついた。
「悪かったって」
「だから怒ってない」
「なんでそんなに怒ってんだよ」
ユーリはベティを抱き寄せた。
「怒ってないわよ」
「まだ言うか……このやろう」
彼はそのまま強引に唇を奪い、ぐいっと舌をねじ込んだ。
「んーっ」
嫌がるそぶりを見せるベティだが、ユーリの舌がぬるりと動くと、ふっと力が抜けた。
彼が絡みつくように動かせば、彼女も応えるようについてくる。
「んっ…ユーリ、やめてやめて…」
ベティはぐいっとユーリを押し返す。
「やめてって顔かよ」
彼はするりとベティの腰を撫でた。
彼女の瞳は熱っぽい潤みを含んでいて、表情は酷く蠱惑的だ。
「だって……したくなっちゃうわん……ひさしぶりに会ったんだし…」
そう言って困ったように眉を下げ、ぽっと頬を紅潮させる彼女。
ベティにそんなつもりは無くとも、ユーリにとっては誘惑以外の何物でもなく、彼女を今すぐ抱きたいと思わせるのに充分だった。
「俺はずっとしてぇんだけどな」
彼は耳元で囁くようにつぶやいて、ベティを抱き寄せた。
「ちょっと待って……今日はリリに頼まれて来てるのん……」
彼女は、理性と衝動の間で揺れているように見えた。
とは言ってもユーリ達は大人。
リタたちをほっぽり出して2人で……というのはさすがにはばかられる。
「今日はエステルんち泊まってくのか?」
「決まってないけど……ジュディスがダングレストに戻るなら一緒に戻るわよん」
「なら先に用事済ませようぜ」
ユーリはそう言って軽くキスをして、ベティの腰から手を離した。