肉の芽を抜かれたポルナレフはその後、私たちと行動を共にすることになった。




Amour Amour Amour



「ふわぁ・・・」

ナマエはあくびをしてグッと伸びをする。


先ほど香港の港でジョセフさんがチャーターした船に皆で乗り込み、今しがた出航したばかりだ。


お日柄も良く、波のない静かな海を眺めていると、その平穏さに眠気が襲ってくる。
この船には乗組員以外お客さんは乗っていないので迷惑をかける心配もないし、良かった良かった。



「香港からシンガポールまで、まる3日は海上だな」

ジョセフさんが皆に向かって言う。


まる3日かぁ・・・それは結構暇を持てあましそうだなぁ。シンガポールは思ってたよりも遠いんだねぇ・・・

デッキチェアに腰掛けながら、うつらうつらした頭でそう思った。今のうちにちょっと仮眠をとろうかな。


ジョセフさんは承太郎くんと花京院くんを見て顔をしかめた。

「しっかしお前ら・・・その学生服は何とかならんのか?見ているだけで暑苦しくて仕方がないわい」


「・・・フンッ」
承太郎くんはそう言って無視を決め込む。


「ぼくらは学生でして・・・ガクセーはガクセーらしくですよ。・・・というリユーはこじつけか。」

と花京院くんは返した。


制服って便利で素晴らしいものだと思うけどなぁ。毎日服考えなくてすむし。
ナマエは静かに横になってそんなジョセフさんたちのやり取りを見ていた。


「でも確かに潮風も心地いいしちょっと一泳ぎでもしたいところですね。」

前髪をなびかせながら花京院は微笑んだ。


ポルナレフがそれを聞いて近づいてきた。

「水着とかも一応あるらしいしせっかくだから泳ごーぜッ!なぁナマエ!」


名指しで突然そう誘われる。


「えー・・・私泳ぐのそんなに得意じゃないんだよねえ。」


「カナヅチなのか?よーしそれなら俺が手取り足取り教えてやるよ!へへ」


別にカナヅチとまでは言ってないのだけど。


「なんか下心を感じるからやだー」


ナマエはそう言ってぷいっと反対側を向いてしまった。


ポルナレフはガーンとした表情を作って「心外な!下心なんて!」と喚いている。



「ニシシ、お前下心がすけすけじゃってよ」

とジョセフがポルナレフの肩をぽん、としながら言った。

その後もぎゃーぎゃーとうるさいポルナレフとジョセフを見て、承太郎は「うっせーぞッ!てめーら」と怒鳴った。





港を出発する前、ポルナレフからDIOに仕えたワケと妹さんの復讐の話を聞いた。平和ボケした環境で暮らしてきた自分には異次元のような話のように思えて、でも実際に起こったことで・・・。復讐に燃えるポルナレフを止めようなんて思わないし、きっと逆の立場だったら私だってそうすると思う。だけど復讐のために失われたものを考えると、やりきれないというか、哀しい気持ちになるのは一体どうしてだろう。



ナマエはそこまで考えて静かに目を閉じた。



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「きろッ!!ナマエ!!」


んー・・・何やら騒がしい。突然身体が宙に浮いた。なっ何事?!と頭が一気に覚醒すると、ポルナレフが私を俵抱きにして救命ボートに走り出すところだった。

「ふぁっ?!何?!どうしたの?!」

「船長に扮した敵が襲ってきたせいで船がおじゃんになったんだよ!てかナマエあんなに騒ぎが起こってたのになんで平然と寝てられるんだよ!!」


ポルナレフが若干呆れ気味にそういいながら救命ボートに飛び乗る。私たちで最後だったらしい。私はポルナレフにお礼を言ってボートに腰を下ろした。救命ボートを見渡すと、乗組員のほかに見知らぬ女の子が乗っていることに気付いた。






「へえ〜〜〜、シンガポールまでお父さんに会いにいくんだあ〜〜、一人で偉いねぇ」


「ふふん、私は見た目だけじゃなくて度胸もあるからね」



ナマエが寝ている間に姿を現した密航少女とナマエは暇つぶしもかねて仲良くおしゃべりしていた。女同士なのでやっぱり話もはずむのだ。


「でも海に飛び込むのはさすがに危ないよ〜女の子なんだから自分の身体も大事にしなきゃ!」


私が寝ている合間に女の子はサメのいる海に飛び込むというなんとも危険なコトをしていたということを知って、私は少女を嗜めた。


「大丈夫よ!人生に危険はつきものっていうでしょう?」

そう言いながらミネラルウォーターを口に含む少女。


そしていきなり水を吹きだした。



「わっどしたのっ!?」

「あ、あわわナマエさん、みんな!アレ見てアレ!」




皆が一斉に指差された方向を見ると、大きな船がこちらに向かってやってきていた。
貨物船だろうか?不気味な迫力がある船はゆらりゆらりと近づいてくる。


「タラップが下りているぞ!救助信号に気付いて助けにきてくれたんだ!ラッキー!」


チャーター船に乗っていた乗組員が叫ぶ。


乗組員たちはタラップに向かっていく。



空条承太郎は無言で船を見つめている。

「承太郎・・・何を案じておる?まさかこの貨物船にもスタンド使いが乗っているかもしれんと考えておるのか?」


ジョセフはそんな承太郎に声を掛けた。


「いいや・・・ただ、タラップが降りているのに何故誰も顔を出さないのか気になってな・・・」



うぅっ・・なんかそんなことを言われると途端に船に乗るのがためらわれてくる。


「ここまで救助に来てくれたんだ!誰も乗ってねーわけねえだろーがァッ!」


ポルナレフは叫んだ。


「どちらにせよ水も食料も残り少ないんだ。このままボートで漂流というわけにもいかないさ。」

「ふむ。しかし用心するにこしたことはないな。」


花京院とアブドゥルはそれぞれ発言した。


「それにしても・・・不気味な船だね・・。」


正直言えば進んで乗りたいとも思わないけど、ボートで漂流するよりはずっとマシなので今現在の選択肢としてはこの貨物船に乗るしかない。



ナマエは覚悟を決めて不気味なほど静かな船へと足を踏み入れた。




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