香港に着くと、漢字がそこかしこ溢れる街並みとゴチャゴチャした人の様子に圧倒された。



Amour Amour Amour





飛行機での進路を断たれた今、どうやってエジプトまで向かうかということが目下の課題であった。

今私たちは香港の中華飯店に来ている。ガヤガヤと活気のある店内に自然と料理への期待が高まる。なんといっても海外は初なのだ。このメンバーの中で海外に行ったことがないのはナマエだけだった。自然とテンションが一段階上がってしまうのはしようがないことかもしれない。「料理楽しみですねぇ!」とニコニコしながらアブドゥルの服の袖をひっぱるあたり、浮かれている様子が出ていた。


向かいに座る承太郎が若干呆れた様子でナマエを見る。やれやれ、と承太郎は心の中で思った。




結局これからの道程は、海路で行くことになった。飛行機はまた同じことの二の舞になるし、陸路は時間がかかる上に砂漠や山越えをしなくてはならないので海を使ったルートの方がいいということだった。ナマエはそういったことは全く分からないので、海外事情や地理に詳しいジョセフとアブドゥルにお任せした。



「さぁて、じゃあ食べ物を注文するかのぅ!」
ジョセフさんが雰囲気を変えるようにパンッと手を打って明るくそう言った。


「やったー!」
わーいわーいと喜ぶナマエ。


そんなナマエを見た花京院と承太郎は小声でこう話した。

「なんか・・ナマエさんって見た目よりお茶目で可愛らしいね」

「・・・俺は精神年齢が低すぎると思うがな」

「承太郎、その言い方は・・・でもあんまり年上ってかんじはしないよね」

「そーだな」



そんな軽く失礼な2人の話が聞こえていないナマエは、サイドに座っているジョセフとアブドゥルに「何頼みますー?」と笑顔で聞いている。


するとそこへ一人の銀髪の男性がフラリとやってきた。特徴的な髪型の白人男性で、大きなイヤリングをしていた。


「すみません、ちょっといいですか?私はフランスから来た旅行者なんですがどうも漢字が難しくてメニューが分かりません。助けてほしいのですが・・・」


そう困ったふうに話しかけてきたのだった。


「やかましい。向こうへ行け。」

そんな困っている旅行者をバッサリ一刀両断する承太郎。



「ちょ、承太郎君っ!そんな言い方はないでしょ!ご、ごめんなさい・・・」


あまりの無慈悲な拒絶ぶりにぎょっとして私が代わりにフランス人男性に謝る。
怒ってるんじゃあないかとおそるおそる顔をみると笑顔で「いえ、大丈夫です。」
と言ってくれたので良かった。


「そうだぞ承太郎・・・いいだろうっ!ワシに任せろッ。わしゃ何度も香港は来とるからメニューぐらいの漢字はだいたい分かる・・・。で、何を注文したい?」

ジョセフは腕をまくって、メニューの中から男性が食べたいものを探し始めた。




しばらく経ってオーダーした料理が次々とテーブルに並んだ。



・・・



あれ?ジョセフさん何を頼んだんだっけ?

おかしいな、あの男性が食べたかったものと全て違うモノが来たけれど。



「・・わ・・・わははははははははは!ま まぁいいじゃないの。何を食べてもおいしいものよ!みんなで食べよう わしのおごりだ!」


ジョセフさん・・・

みんなの冷たい視線が彼に降り注ぐ。良かった、私小龍包頼んどいて・・・。
別に好き嫌いとかは特にないけれど、さすがにカエルの丸焼きは食べたいとは思わない。

私がアツアツの小龍包と格闘していると、花京院くんがじっともの欲しそうな顔で見ていたので一つあげた。無意識に私の小龍包を見つめていたことに気付いたのか花京院くんはちょっと顔を赤らめながらもお礼を言って小龍包を口に運んだ。


「おいしいですね!この小龍包」

「ねー!やっぱり本場は違うね。頼んで正解だったよー」


2人でにこにこしながら小龍包を頬張る。ふと承太郎くんと目が合う。


「・・・もしかして承太郎君、欲しいのかい?」

「・・・いらねェ」


ニヤッとしながら聞くと、承太郎君はフンとそっぽを向いた。



「まぁそれにしても・・・手間暇かけてこさえてありますなぁ」


斜め前の席に座るフランスの外人さんが呟いた。


「ほら このニンジンの形」

そう言ってお箸で星形のニンジンをつまんだ。

「この星の形 どこかで見覚えがあるなぁ〜〜。そうだ 私の友人がこれによく似たアザを持っていたなぁ・・・」


ハッと場の雰囲気が一変した。


その時スープからキラリと輝くものが現れた。思わず私は叫ぶ。

「危ないッ!スープからなにか出てくるっ!」


「スタンドだっ!!」

今度はジョセフさんが叫ぶ。


「マジシャンズ・レッドッ!!」


炎がスタンドを攻撃する。さすがアブドゥルさん!無駄のない素早い攻撃だ。



しかしそれをひらりとかわしたスタンドは、その全貌をあらわした。


そこで彼はジャン・ピエール・ポルナレフという名前を名乗った。


彼のスタンドは中世の騎士のような『銀の戦車』(シルバーチャリオッツ)というものらしい。その洗練されたデザインにカッコイイ・・・と思ったが、刺客であるし戦いの真っただ中なので黙って状況を見守っていた。


ポルナレフという男は大変自分の剣さばきに自信があるようだった。

その証拠に自分が放り投げた5枚のコインをレイピアで瞬時に貫いて見せた。


「コインとコインの間に炎が燃えている!」
花京院くんが驚いた表情で言った。

「う・・・う なるほど。コインとコインの間に私の火炎をも取り込んでいる・・・」

アブドゥルさんは苦い表情で忌々しげに言った。


「フフフ・・私のスタンドは自由自在に炎をも切断できるという事だ・・・」



「す、すごい・・・」

思わず目の前の鮮やかな妙技に対してポロッと言葉が出てしまった。ナマエはハッと口に手を当ててポルナレフの方をチラッと見ると、ポルナレフは得意げな顔でこちらにウインクを飛ばしてきた。そんなポルナレフの行動にナマエは驚きに目をパチパチさせた。
5対1のこの状況でよくもまあそんな余裕の態度が取れるものだ。それだけ自身のスタンド能力に絶対の自信があるのだろうけれど。



ポルナレフは、あえてアブドゥルの炎が十分に発揮できる外で対戦しようともちかけた。


「さぁ、全員表に出ろ!そこのマドモワゼルを除いて一人ずつ順番に切り裂いてやる!」



「・・・・・マドモワゼルって私?」

困惑しながらポルナレフの方を見ると、「ウィ、マドモワゼル。俺は騎士道精神に基づいて女子供には手を出さないのでな。」と言われた。


DIOの刺客にしては妙に気高いポルナレフに対して、ナマエはなんでこの人DIOみたいな外道に仕えているのだろうか疑問に思った。そして一同は外のタイガーバームガーデンへ移動し対決をすることになった。





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アブドゥルとポルナレフの戦いはとにかく凄まじいものだった。アブドゥルさんのクロスファイヤーハリケーンを直にくらって再起不能になったと思われたポルナレフは、実際にはほとんど無傷であった。そればかりか防御甲冑を脱いだ分スピードが増して残像がつくりだせるようにまでなっていた。だがそこは我らがアブドゥルさん。こっそり空けた地面から送り込んだクロスファイヤーハリケーンスペシャルでポルナレフを追い詰めることができた。


アヴドゥルが懐から短剣を取り出し、炎に包まれて倒れているポルナレフの目の前に投げげた。

「炎に焼かれて死ぬのは苦しかろう。その短剣で自害するといい・・・・・・」アヴドゥルがくるっと背を向けて言った。

ポルナレフはその後ろ姿を睨み付け、短剣を拾うと振りかぶった。しかし目を閉じるとその手を納め、今度はピタッと自分の喉にあてた。
「うぬぼれていた・・・炎なんかに私の剣さばきが負けるはずがないと・・・」そう言うと、ポルナレフは短剣を捨て、静かに横たわった。


「フフ・・・やはりこのまま潔く焼け死ぬとしよう・・・それが君との闘いに敗れた私の、君の『能力』への礼儀・・・自害するのは無礼だな・・・」


ナマエはその精神性の高さに驚きと感動すら覚えてしまった。どこかの漫画のような台詞を借りて言うと、「敵ながらあっぱれ」だ。


アヴドゥルはポルナレフの言葉を聞くと振り返り、パチンと指を鳴らした。するとポルナレフを包んでいた炎が消えた。そしてニヤリと承太郎がほくそ笑む。


「あくまでも騎士道とやらの礼を失せぬ奴!しかも私の背後からも短剣を投げなかった・・・!DIOからの命令をも越える誇り高き精神!」


アヴドゥルがポルナレフの額に『肉の芽』を確認して言った。
「殺すのは惜しい!何かわけがあるなこいつ・・・JOJO!」


「うむ」承太郎が『スタープラチナ』を出す。


グネグネとうごく触手のようなものが暴れている。こ、これが花京院くんの頭にも埋め込まれていたという肉の芽・・・だいぶこれ気持ち悪いぞ


「うええ〜この触手が気持ち悪いんじゃよなァ〜!肉の芽を早く抜き取れよ!早く!」
ジョセフさんが眉をしかめて言った。

私も同じ気持ちだ。さりげなく花京院くんの後ろに移動する。


「あぁ、ナマエさんは目にするのは初ですよね、大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫・・・結構ショッキングな絵面だね・・」



そんな合間にもスタープラチナは肉の芽を手際よく取り去った。




「・・・と、これで肉の芽が無くなってに・く・めない奴になったわけじゃな。ジャンジャン!ヒヒ」


肉の芽を消滅させると、ジョセフがポルナレフを抱きかかえて言った。



「おい花京院、ナマエ、こーゆーダジャレいう奴ってよーっ!ムショーにハラが立ってこねーか!」



そんなことを言う承太郎くんに私と花京院くんは顔を見合わせて苦笑いしたのだった。




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