その後、私のスタンドはアブドゥルさんの占いによって「クイックシルバー」と名付けられた。





Amour Amour Amour




ここ最近スタンド使いが増えているらしい。何でもジョセフさんが若いころにはスタンドなんて存在しなかったらしい。なんとも奇妙な話だ。
私はアブドゥルさんに今朝見た夢の話をしてはみたが、あくまで私が見た夢の出来事でしかないので何故私にスタンドが発現したかという本質はわからなかった。


私はこの後夕方からバイトに行かなくてはならなかったのでジョセフさんとアブルドゥルさん、そしてジョセフさんの娘のホリィさん(とても可愛らしい人だった)にご挨拶とお礼をして、豪邸を後にした。

この街は今、なにやら危険らしいので、明日また顔を出すように言われた。私もまだまだスタンドに関して聞きたいことはいっぱいあったので快諾してまた明日、と約束した。
この日は本当に色々なことが立て続けに起こったのでへとへとになって、バイトが終わって家についたときは倒れこむようにベッドへダイブした。





そして翌日。
この日は大学が一限だけだったので、講義が終わるとすぐに席を立ち大学を飛び出して、昨日お世話になった豪邸、空条家に向かった。




ピンポーン・・・



・・・



ピンポーン


・・・




おや?立派な門の前でインターホンを鳴らしても、全く応答がない。
なんでだろう?昨日ジョセフさんは明日は必ず家にいると言ってたんだけどな。


なにか心配になって大きな門をキィ・・と開けてドアの前までくる。
遠くの方で怒鳴り声のようなものが聞こえる。バタバタとしている気配がする。


もしかして・・・昨日のような刺客に襲われてる?!!


そう思ったらドアを開けて(すんなり開いた)声のする方向へと足が向かっていた。
なにぶん広いお家なので走らないとすぐにはたどり着けないが、私なりに全速力で
声のするキッチンへ足を進めた。


「ジョセフさん!アブドゥルさん!大丈夫ですか?!!」


ぜぇぜぇしながらようやく人のいる場所にたどり着くと、昨日笑顔で私を気遣ってくれたホリィさんが倒れていた。そしてその周りをジョセフさん、アブドゥルさん・・・・あと学ランを身にまとった2人の知らない学生がホリィさんを見守るように立っていた。


バッと4人全員が私の方をみる。全員背が大きく真剣な表情をしているので、私はだいぶ威圧された。しかし今はホリィさんに何があったのか心配だ。物凄く苦しそうだ。


「ホリィさん・・・?!何があったんですか?!」


「なんだこの女・・・?」


「おお!ナマエじゃないか!・・・恐ろしいことがワシの娘に起こってしまったんじゃ・・・」


「その話はあとでじっくり聞きます。とりあえずホリィさんを布団に寝かせてお医者さんを呼びましょう!」


「う、うむ・・・そうだな!よし、ホリィを運ぶぞ!」


「おいジジイ、この女は誰だ。」


「よし!アブドゥルは足を持て!ワシが上半身を持つ!」


「ホリィさん・・・こんなに苦しんで・・いったい何が・・」


移動しつつホリィさんの手を握り締める。苦しむホリィさんの首のあたりから茨のようなものがはみ出ていた。



「・・・・」


見事に無視をされとり残された空条承太郎の肩を花京院がぽんと叩く。
母のスタンド発現にDIOという男の存在、謎の女の登場と、てんやわんやである。チッと舌打ちをし片手で頭を押さえながら、母ホリィのいる和室へと向かった。










ホリィさんを安静にさせたところで、ジョセフさんに事態のいきさつを聞いた。吸血鬼だのジョセフさんの祖父の身体を奪っただの、世紀をまたぐ因縁の関係だの普通だったら現実味がなさすぎて信用に値しない話も、真剣な彼らを前にしては信じるほかなかった。実際私がスタンドが発現したのも、このDIOとかいう男が関係しているからのように思えたからだ。
そしてこのDIOという吸血鬼を倒さなければホリィさんは50日以内に死ぬらしい。なんて無情で理不尽なことか。
私たちはホリィさんのいる和室の隣のリビングでそれぞれ椅子に座って話をしていた。


「・・・というわけで、わしらはこれからDIOを倒すためにヤツのいるエジプトに向かう。何としてでもホリィの命を救う。」


「そうするしか、ホリィさんを救うことはできないんですよね。」


「ああ、そうだ。それにDIOとジョースター家には因縁がある。断ち切らねばならない因縁がな。」


「おい、ジジイ。いい加減にこの女がなんなのか言わねーとぶっ飛ばすぞ。これは赤の他人が知っていい話じゃあないんだぜ。」


帽子を被った男の子がそう言って私をギロリと睨んだ。
そういえばホリィさんのことに必死でお互いに自己紹介するまもなかった。それにしてもなんなのこの子。高校生だろうにめっちゃ目力ある。迫力ありすぎて怖い。
怖い男子高校生の隣には、緑がかったガクランを着た男の子が私を見ている。
良かった、彼は恐ろしい形相でメンチ切ったりはしてこないようだ。


「コラ、なんつう眼でナマエを見とるんじゃお前。」


「テメェーがさっきからシカトするからだろーが・・・」

眉間に皺を寄せ、ジョセフさんを睨みつける。ヤクザもビビリそうな顔してるよ。高校生相手に私は内心ビビッた。


「ごめんなさいっ!名乗るのが遅れましたっ!私はミョウジナマエ、すぐそこの○○大学に通う大学生です。えーと、それで私とジョセフさんがどんな関係かってことよね?うんと、昨日会ったばっかりなんだけど・・・」

そこで緑の学ランの彼が軽くズッこけた。まさか昨日出会ったばかりの人間だとは思わなかったのだろう。

「それでね、昨日そのDIOの刺客に偶然襲われそうになったところ、スタンドが発現したんだけど、私それにビックリしすぎて気を失っちゃって・・・運よくそこにジョセフさんとアブドゥルさんが駆けつけてくれて間一髪助かった!・・というわけ。それで今日またスタンドについて話聞こうと思って空条さん家にお邪魔しようとしたらホリィさんが倒れていたというわけです。以上」


早口で昨日の流れをばーっと一気に喋った。


「テメぇもスタンド使いなのか・・・どうりで物わかりが良いと思ったぜ。」


「承太郎、年上の人に対して”テメェ”は失礼ですよ。」


いやもう別にテメェでもなんでもいいっす。ほんと怖い。年下だけど怖い。むしろ年下でこんな威圧感あるのが怖い。男子高校生コワイ。そう思いながら、気を使って注意をしてくれた緑ガクランの少年に微笑みを送る。


「申し遅れました、僕の名前は花京院典明です。DIOに肉の芽をうえつけられて操られていましたが、承太郎たちに助けてもらったおかげで命拾いしました。僕もこれからジョセフさんたちとエジプトに向かいDIOを倒します。」


「・・・空条承太郎。そこにいるジジイの孫だ。」


とりあえず私の素性に満足してくれたのか、2人もそれぞれ自己紹介をしてくれた。すごく対照的な自己紹介だが。そこは気にしないでおこう。
ジョセフさんの孫である承太郎くんは、ショセフさんとは正反対な性格らしい。

ジョセフさんは「なんて可愛げのない孫・・・シクシク。」と嘆いている。


それにしてもすごいなぁ。息子である承太郎くんや父親のジョセフさんはともかく、直接関係のない花京院くんまで旅についていくなんて。高校生なのにたまげた根性だ。



私も・・・何かできないかな・・・ホリィさんのために。






「も・・私も、行っちゃ、駄目ですか?」




気づいたらこう私は言っていた。
たどたどしくも、ハッキリその言葉は部屋に響いた。



「スタンドに関してはズブの素人だし、足手まといかもしれないけど、ジョセフさんについていきたい。お願いです、一緒に行かせてはもらえませんか?」




「な、なにを言ってるんだナマエ?!」

それまで割と静かだったアブドゥルさんが慌てた様子で言った。

「そ、そうじゃぞナマエ!気持ちはうれしいがとても女の子が付いていけるような旅ではないんじゃぞ?!」


花京院君はオロオロと私とジョセフさん達を見ている。承太郎君は無言だ。


「わかってます。昨日実際に刺客に襲われかけましたし。私が想像するよりもきっとずっと恐ろしいし大変な旅路だってことも。でも、ここで何もしないと私、一生後悔します!
それに、どうせDIOを倒さない限りは、スタンド使いは肉の芽で手下にされる危険性が高いんですよね?それならむしろジョセフさんたちに同行してDIOを倒したほうがいいと思うんです。これは自分のためでもあります。」


「じゃが・・・」


そう続けようとするジョセフさんを承太郎くんは手で制した。


「テメェのスタンドを見せてみろ。」


承太郎君はまっすぐ私を見つめた。

私は無言で見つめ返しながら頷いた。右腕をすっと出す。


「・・・クイックシルバー」



となえたと同時に右腕に重量感。右腕は頑強な砲台へと変化した。



「・・・これが私のスタンド。クイックシルバーっていいます。」



初めてナマエのスタンドを目にする花京院は、突然彼女の右腕が砲台に変化するのを見て驚いた。承太郎も帽子の下で陰にはなっていたが、少し目を見開いた。


「女の人にこう言ってはなんですけどすごく戦闘向き、ですね。」


「ハハ、ね。まだ試してないからなんとも言えないんだけど、数十メートル先でも攻撃することが可能なスタンドだと思う。」

花京院の率直な感想に苦笑しながらナマエは言った。
そして再びジョセフとアブドゥルに向き直った。


「ねっ、ジョセフさん。一生のお願いだから、私も連れてって・・・」



「うぅむ・・・・」



「いいじゃねェーかジジイ。」


承太郎くんがそう言った。相変わらず強い眼光で私を見る。


「コイツが本気で行きてぇっていうのは見てわかった。スタンドだってそれなりに役に立つだろう。だが俺たちはテメェが女だからって甘やかしたりはできねーぜ。命をかけた過酷な旅になるかもしれねーからな。足手まといになるっていうんならその場で置いてく。それでもいいんなら来い。」


「・・・いいッ!行くッ!!」


ここまで言われて付いていくなんてバカの極みかもしれない。でも行かなきゃ後悔するのだ。それに危うくDIOの手下にされそうだった私を助けてくれたジョセフさんとアブドゥルさん、苦しんでいるホリィさんの力になりたいという想いがあった。


私の二つ返事に対して承太郎くんは口角を釣り上げた。
初めて彼の笑みを見たかもしれない。



「・・やれやれ。見た目に合わず強情なんだな。」



そう言った。そんなに私意志薄弱に見えるかね?



ジョセフはふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜、と息をついた。


「正直、ナマエが来てくれれば大きな戦力になってくれるんじゃぁないかと思っていたんだよ。」


ニカッと人好きのする笑顔で言った。


「巻き込みたくない一心で拒否はしたが、ナマエがメンバーに加わってくれることは素直に嬉しい。娘のためにありがとう。本当に感謝するよ。」


「そんな、私が行きたいってゴネただけですから!」


ブンブンと首を振る私をジョセフさんは優しい目つきで見つめる。



「よしっ!じゃあアブドゥルも花京院も承太郎も覚悟はいいなっ?!では・・・この5人でエジプトへといざ出陣じゃ!」



「おー!」

拳を突き上げそう気合を入れるナマエに対し、



「ナマエ、厳しい旅になるだろうが宜しくな。」


「ミョウジさん、これから宜しくお願いします。」

アブドゥルと花京院はそれぞれ声をかけた。


「こちらこそよろしくお願いします!あ、あと花京院くん。別に私のこと呼び捨てでも構わないよ。」


「え、そうですか・・?でも呼び捨ては慣れないのでナマエさんと呼ばせてもらいますね。」


はにかんだ笑顔で少し照れながらそう言う花京院。




「・・・よろしく」

背後でボソッと呟かれて振り向くと、承太郎が部屋を出ていこうとしていた。


「・・・よろしくっ!」

ナマエは笑顔で承太郎の背中に向かって声をかけた。





これから旅が始まる。長い旅が。






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ポルポル出てこないやないか





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