人生初の失神を経験した後に目覚めた場所は、趣ある日本家屋だった。





Amour Amour Amour




「・・・ここ、どこ?」



目が覚めると井草がほんのりと香る和室に寝かされていた。
一体ここはどこ?私は誰?そんな状態である。名前はミョウジナマエ大学2年19歳だけど。

もしやさっきの怪しいおじさんに連れ去られた後なのだろうか。
それにしてはやけに静かで安心するかんじがあるのだけど・・・


そういえば、とおそるおそる自分の体を見る。


良かった。腕がある。
そんな人から見たら当たり前の感想を心の中で呟き安堵する。

やっぱり幻覚だったんだ人間の腕が砲台に変わるなんてありえない、あれは夢あれは夢あれは夢夢ユメユメ・・・・・



「・・・目が覚めたかね?」



目の前の障子が開いて向こう側から光が差し込んできた。


「あなたがたは・・・」


さっきの外国人男性二人だ!ということはここはあの豪邸?!

一人は色の黒い西アジアっぽいかんじの男の人で、もう一人は白人の超背の高いおじさんだ。色黒の男性が口を開く。


「君の叫び声を聞きつけて私たちが向かったところ君が倒れていたので保護させて貰った。」

「あ、ありがとうございます・・!あのおじさんは・・・?」


「あの男は私たちを狙う刺客で、我々に襲いかかってきたのでちょっと眠ってもらった。」


「は・・・はぁ。し、刺客。」


「刺客」て。リアルで初めて聞いた。資格とか死角じゃないよね?
なんか先ほどから色々ぶっ飛んでいて状況がよく掴めないのだけど。


そんな戸惑う私を見て、白人のおじさんはニカッと人のよさそうな笑顔を見せた。


「われわれは怪しいものではない。心配せんでもいい。しかし怖い思いをしたなお嬢さん。でももう危ないヤツはこのジョセフ・ジョースターが倒したからのぅ!安心しとくれ。」

ジョセフさんというらしいおじさまはそう言うとガハハと笑った。

そんなジョセフを冷たい目で見た色黒の男性は「倒したのは私でしょうジョースターさん・・・」と若干呆れ気味に呟き、私の方を向いた。

「私はモハメド・アブドゥルと申します。私たちのせいで貴方を巻き込んでしまったようですまない。一応怪我がないか確かめさせてもらったが身体に異常はないかな?」

「私はミョウジナマエです。身体は大丈夫です。特には・・・」

と言いながら腕をチラリとみる。やっぱりさっきの事が気になって仕方がない。


「あの・・・聞きたいことがあるんですが」


「ん?何かな?」


アブドゥルさんが応える。



「”スタンド”って・・・知っていますか?」



2人の空気が変わった。なにか悪いことでも聞いてしまったのか。
何だろう、彼らの目つきが少し鋭くなったような気がするのは。
アブドゥルさんが口を開く。


「スタンドという言葉、どこで知ったのか聞いてもいいかね?」



「ええと・・先ほどのおじさんの肩に、突然赤い目をした猿のようなものが現れたので、私がどこからその猿はでてきたのか?と聞いたら、おじさんが『お前はこれが見えるのか?ならスタンド使いだな』って・・・」


私の話を聞いた二人は驚きを隠せない表情でいる。


「お、おぉまさか、お嬢さんがスタンド使い・・?」

「ホリーさんと同じように見えるだけかもしれませんよジョースターさん。」


「あの、話にはまだ続きがあって。」

「ふむ。話してくれ。」


アブドゥルさんが促した。

「猿が襲ってこようとしてきたので怖くて目を閉じて腕を前にやったら、
その、腕、が」


自分が話していることのありえなさに気が遠くなる感覚にかられながらもゆっくりと言葉をつむいだ。


「腕が・・・?」

ジョースターさんが聞き返す。




「その・・異形のものに・・・」



場が静まる。それは予想できたことだった。
自分自身あまりに意味不明な発言をしていることには自覚があるが、真面目に体験したことである。頭のおかしい女と思われるだろうか、それともバカにされるかヒヤヒヤしながらおそるおそる二人の顔を窺うと、真面目な表情で私を見据えていた。


「キミ、これは見えるかね?」


アブドゥルさんがそう言った瞬間、突然男性の肉体と鳥の頭が合体したかのようなものが現れた。


「ひえっ?!!な、なんですかこれは!!」


「これが君のいう”スタンド”だよ。隣にいるジョースターさんもスタンドを持っている。」


「これがわしのスタンドだよ」

そういって手に巻きついた茨を見せてくれた。

「スタンドは精神エネルギーを具現化したようなもので、形や能力は人それぞれ異なる。スタンドを持つ人間はスタンド使いと呼ばれる。とはいえスタンド使いは珍しい。万人に宿る能力ではない。そしてスタンドはスタンド使いにしか見えることはない。つまりだ。」


「私が・・・スタンド使い・・・ってことですよね?」


2人は頷いた。
夢で言っていたことはどうやら真実だったらしい。まさかの正夢。驚愕の真実。



「ミョウジさん、君のスタンドを見せてはくれないか?」


「ナマエでいいですよアブドゥルさん。私のスタンド・・・」


あれ?スタンドってどうやって出すの?やり方がわからない。


「スタンドは心で『出ろ』と念じれば発現する。」

困った私を見て察してくれたのか、アブドゥルさんが教えてくれた。


わかりましたと言ってスタンド出ろ出ろ出ろ・・・・・っと念じる。





すると腕に重量感が。




「う、うわああああああっ」


恐怖と衝撃再び。やっぱりさっきのは見間違いじゃ無かったんだという現実をつきつけられる。私の右腕はヒジから下が砲台と合体していた。ああ、こんなことって・・・また意識が遠のきそうになるが、ぐっとこらえて現実に向き合う。

にしても、コレは何度見ても慣れそうにないぐらい衝撃的なフォルム・・うぅ


「OH MY GOD !!すごい格好いいじゃあないかッ!威力もありそうだし・・・ワシこういうの憧れてたんだよネ」


「身体と一体型なんだな・・何をエネルギーにするんだ?興味深いな・・・もっとよく見せてくれないか?」



心に大ダメージをくらっている私に対して二人はのん気している。
のん気してる場合かァっ!!これがっっ!!
若干私はこめかみをピクピクさせているのだが、二人は私の右腕の砲台をベタベタと触って盛り上がっている。


「おッこれ取り外せるぞッ良かったなナマエ!」


こんな物騒なスタンドを腕にぶら下げなきゃいけない時点で良かったもクソもない気がするのだけど・・・ああだめだ口調が荒くなってきた。


「一発発射して威力を見てみたくないかぁ〜?アブドゥルよ。」

「こんな住宅街では無理でしょう。事件になりますよ。」



「試しに撃ちましょうか?」

いつまでもきゃいきゃい女子高生のようにはしゃぐショースターさんに向けて笑顔で右腕を向ける。ジョースターさんは「す、すまんそれはやめてくれ」と若干青ざめた。自身のはしゃぎ様を反省してくれたらしい。
はぁーとため息をついて障子の向こうをみる。明るくて良い天気だ。ピクニックしたいなァ。


「あ、アブドゥル・・・わ、わしナマエを怒らせてしまったかな?」


「あなたが無神経なことをぽんぽん言うからですよジョースターさん。彼女はうら若き女性なんですからショックも受けるでしょう。」


現実逃避を始めて外を眺める私にジョースターさんは話しかけた。


「ま、まぁ発現してしまったものはしょうがないんだし、元気を出すんじゃ!それにそんなにパワーのありそうなスタンドは中々ないもんだぞ!ワシのスタンドはせいぜい念写することぐらいしか現段階では使えんし・・・それにナマエのスタンドは漢らしくてカッコいいぞっ!」

墓穴掘ってんだがフォローしてんだかわからないが必死に元気づけようとしてくれているジョースターさんに、ナマエはプッと吹きだして笑った。ジョースターさんは憎めない人だなと思った。


「・・そうですね、発現してしまったものはしょうがないですし、前向きに頑張ろうと思います。」


苦笑まじりにそう言うナマエを、廊下から差し込んでくる光がやわらかく照らす。

腕には仰々しい砲台がついているいるのにもかかわらず、何故か絵画の聖母のようだなとジョセフ・ジョースターは思った。





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