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平々凡々な大学生の私が、よもやこんな壮絶な冒険に巻き込まれるとは。
Amour Amour Amour 大学生は小忙しい。
明日はレポートの提出やらバイトやらやらなきゃいけないことが結構あったので、目覚ましをかけて夜の11時にはベッドに入った。
そこまではいい。
問題はその後。
率直にいえば変な夢を見たのだ。
≪君はこれから、苦難の道を行く事になるだろう≫
≪それでも君は立ち向かわなければならない≫
夢の中でそう語り告げられる。
≪せめてもの手向けに、君にスタンドを送ろう。受け取ってくれたまえ≫
・・・妙な夢だ。というかスタンドってなによ。
≪スタンドは簡単にいうと、超能力の一種だ。平たく言えば君の分身だ。≫
≪スタンドは原則として一つだけ特殊な能力を持つその力は通常の物理法則に左右されない強力なものだ。君の強い味方になってくれるだろう。≫
なかなかにクリエイティブな夢だ。ちょっと冒険モノの始まりっぽい。
≪ただしスタンドを使いになった君はこれから命を狙われるだろう。十二分に気を付けることだ。家を出たら用心しなさい。≫
え、急に物騒な話になったな。
≪・・も・・時間だ・・さぁ・・・行き・・さ・・い≫
言葉がとぎれとぎれになる。壊れたテープのようだ。
ジリリリリリリリ
そこで目が覚めた。
「ふわぁ〜変な夢みたな・・・くそぅ、なんか寝た気がしない。」
目覚ましをストップさせてもぞもぞと起き上がる。なんかスタンドだのなんだのよくわからない夢を見た。まぁ夢なんてたいてい変なモノか。
顔を洗い歯を磨いて化粧をして服を着替える・・・といった一連のルーティン作業をこなし大学へ行く準備をする。
今日の予定を頭で確認しながら家の戸締りをしっかりしていざ出発。
大学生になってから、私は一人暮らしをするようになった。というのも、大学が実家からだと2時間半かかる距離なので、さすがに通うの辛いという事情からだ。
大学生の一人暮らしは何かとお金がかかるので(仕送りはあるが)、バイトしなきゃあやってられん!状態の貧しさである。そんなこんなで今日も講義が終わったらバイトである。
大学が終わっていったん帰宅するかとなった道中、(ちなみに大学から家までは徒歩20分という素晴らしさ)近所にある豪邸の前に大柄の外国人の方が2名立って話をしているのを見かけた。この街はさしたる都会でもないので外国人メズラシーという田舎の日本人感丸出しの軽い好奇心でチラリと彼らを見ながら通り過ぎた。そして通り過ぎた先、角を曲がるときに人とぶつかった。
「あだっ!すいません」
「・・・ハァー・・ハァー・・ハァー・・」
中年のおじさんとぶつかってしまい、私は咄嗟に謝った。しかし何かおじさんの様子が変である。なんか目がやばい薬でもやってるんじゃないかというようにギョロギョロしているのだ。しかも息遣いが無駄に荒い。なにこれ怖すぎる。
突然そのおじさんの肩に赤い目をした緑の猿があらわれた。
「んなっ?!・・な、ななななな・・・・」
私は驚きで思わず後ずさりしてしまった。
「・・・コレが見えるのか?」
「へっ?・・・もちろん・・てかどこから今この猿でてきたんですか?」
「へっへっへっ・・・じゃぁテメェーはスタンド使いだなァァァァッ!スタンド使いなら話は早ぇッ!ジョースターをぶち殺す前にお前をDIO様に献上してやらァーーーっ!!」
「は?え?なに?すごく不穏な単語が聞こえたんですが気のせい?ちょ、警察呼びますよ警察!」
「警察なんざ呼んだって誰もスタンドなんか見えねェぜーっ!さぁスカーパンサー、この女を生け捕りにしろ!」
何か分からんがこれは危険な気がするっ・・・。というかスタンドってどこかで聞いたような・・・
猿が牙を向けて威嚇し、こちらに近づいてくる。
「ちょ、やだこないで!!イヤーーーッ!!」
手を前に突き出して、怖くて思わず目をきつく閉じる。
自分の中の危険本能が一気に高まる
「・・・・それがテメェーのスタンドか。」
・・・・?
目を薄くあけると、男が驚いたように私の腕を見ている。
何?私の腕がどうかし・・・
「ンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
悲鳴というかもう雄叫びに近い私の絶叫がこだました。
私の腕が
私の腕が砲台になっている
「・・・嘘」
あまりに心臓に悪い出来事で、私はそこで我慢できず意識を失った。
*スタンド説明(「ジョジョの奇妙な冒険RPG〜7人目のスタンド使い〜」より引用)
スタンド名:「クイック・シルバー」(遠距離特殊タイプ)
『本体の腕にスタンド体の砲台が現れる。
スタンドエネルギー体に作り変えて発射できる。
言わば金属を燃料にするスタンドレーザー砲。
単純な破壊力だけなら間違いなくトップクラス。
ちなみに一応着脱可能。』
数あるクレイマン氏の考案するオリジナルスタンドの中でもよりによってヒロインからかけ離れた漢らしいのをチョイスしました。
七人目のスタンド使いのゲームをやっていない方も全然わかる仕様なのでご安心ください。
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