12
結局あの後ポルナレフは一人で仇のスタンド使いを探しに行ってしまった。
Amour Amour Amour「ポルナレフッ・・・」
ナマエは背を向けて50メートル程先にずんずん進んでいくポルナレフを見て思わず追いかけたい衝動に駆られた。
そんな今にも後追いしそうなナマエの手を掴んだのは意外にも承太郎だった。
無言でナマエの顔を見下ろす。傍から見ると睨んでいるようにしか見えない。
”今ポルナレフを追っても無駄だ”そう言いたいのだろう。
それはわかってる、今追いかけてもどうにもならないこと・・なんだけど・・
あのままポルナレフを一人で行動させたくなかった。
復讐しか頭にない今のポルナレフを。
「承太郎くん・・痛い・・」
掴まれる手首を見ながらナマエは言った。葛藤しながらも追いかけることをなんとか思いとどめたナマエのささやかな反抗だった。
その後、ポルナレフに気付かれないように二手に分かれて彼を探すことになった。花京院・アブドゥル・ナマエ組と、承太郎・ジョセフ組はそれぞれ別ルートで行動することになった。ナマエ達はポルナレフが消えた方面をくまなく調べることにした。
「すみません・・・銀髪のこーいう変な形のアタマしたフランス人をみかけませんでしたか?」
ナマエは道端で商いをしている男性に身振り手振りで質問をする。
「ンー・・ああ、たしかにちょっと前にそんな男みたのぉ・・そこの建物の先を右に曲がっていったような気がするが・・・」
「ほんとですかっ?!ありがとうございますっ!」
ナマエは情報提供をしてくれたおじさんにお礼をして、後ろを振り返る。
「花京院くんっ!アブドゥルさんっ!聞きましたっ?ポルナレフはあの建物のー・・・」
・・・あれ?
ほんのちょっと前まで一緒にこの近辺を聞き込みしていた筈の2人が居なくなっている。
「え・・・もしかして、置いてかれちゃった・・・?」
そ、そんなヒドイ!こんな異国の名も知らぬ路上でぼっちなんて。
キョロキョロとナマエは必死に目を凝らして道行く人々を注視した。しかし今自分が居る範囲でアブドゥルさんと花京院くんらしき人は見当たらない。
「ど・・どうしよう」
そうこうしている間にも時間は進んでいく。ナマエはとりあえずポルナレフが先ほど進んだという道を行くことに決めた。ポルナレフのいる方向に行けば自ずと花京院達とも再会できるのではいかと考えたからだ。
「よぉーしッ!」
ナマエはさっき教えてもらった方向に一直線に駆けていった。そんなナマエを見て、先ほど道を教えた初老の男性は「若いもんええなあ」と呟いた。
「はて、しかしあの建物を右に曲がるんじゃあなくて左に曲がるんだったかもしれんの・・いけないいけない、最近物忘れが激しくていかんわ・・」
おかしい
教えてもらった道に進んだはいいけれど、ポルナレフが全然見つからない。聞き込みをしてもそんな男は見かけてないと言われてしまう始末だった。
仕方がないので今来た道を引き返そうとしたナマエだったが、もともと地理に疎い(早い話が方向音痴)のナマエは、よく似た道の連続の中で完璧に迷ってしまった。
道を見失ってからどのくらいの時間が経過しただろう。
一人ぼっちという状況と見知らぬ国で迷子という最悪の状況にナマエは頭をかかえた。今は道に迷っている場合ではないのに!ナマエは最高潮に焦る気持ちを抑えながらインドの通りをひたすら走り回る。
ずりっ
走り回る最中に、路上にあった大きめの石につまずき、ナマエは思い切り転倒してしまった。
「・・・ったぁ・・・・」
泣きっ面に蜂とはまさにこういう局面のことをいうのかな。もうなにやってるんだろう。なんか涙が出てきそうだ。
「おいおい、大丈夫かいお嬢ちゃん?」
頭上から突如声が降りかかってきた。
若干半泣きのような表情で私は顔を上げた。するとそこには西部劇さながらのガンマンのような風貌の男性が、私に向かって手を差し出していた。
「ありがとうございます・・」
優しい人もいるものだ・・!私はじーんとしながらお礼を言って親切な男性に向かって手を伸ばした。
男性は私の顔を見て、何故か表情を硬くした。どうしたんだろう、半泣きで酷い顔をしているので引かれてしまったのかもしれない。
すると次の瞬間すぐに何事もなかったように目の前の男性は柔らかい表情を作って私の手を掴んで起き上がらせてくれたのだった。
----------
DIO様の命令でJガイルの旦那とコンビを組んでジョースター一行を倒す計画は順調だった。そう、途中まではな。
あのまま旦那と俺の挑発に乗っていればポルナレフも始末できたものを…花京院というやつがあそこまで頭がキレるとは思わなかったな…誤算だったぜ
旦那と違って車で逃げたアイツらを追いかける術がねぇおれは、歩きでヤツらを追い掛けることにした。
まぁ旦那が一人でポルナレフ達を始末してくれりゃぁこんな楽なことはねぇしな…
そんなことを思いながらポルナレフが逃げて行った方向へホルホースは歩き始めた。
おれのコンビのJガイルの旦那は弱点はほぼ無いといってもいいようなスタンド使いだ…恐らくなんの問題もなくやれるだろう…
そう考えながら歩いていると、突然目の前で一人の女が勢いよく地面に倒れこんだ。
世界一女に優しいことを自称するこのホル・ホースという男は、当然のごとくスッと女に手を差し伸べた。
ドジな女もいるもんだ。でもおれはそんな間の抜けた女も嫌いじゃあないぜ。
そんな風なことを考えながら。
しかし次にその女の顔を見てホル・ホースは硬直した。
涙目でこちらを見上げる東洋人の女には見覚えがあった。
こッこの女は…ジョースター達の仲間じゃねぇかッ…!
名前は確かミョウジナマエ…
ホル・ホースはとりあえず怪しまれないようにナマエの手を掴み起き上がらせる。
いや…おれの正体はバレちゃいねぇ…この嬢さんが一人ならこれほどラッキーなものはねぇはずだ…
ミョウジナマエは目の前の男が敵だと全く気付いていないようすで笑顔でお礼を言う。
さて、どうしたものか。
ホル・ホースは口の端をつり上げながらそんなことを考えた。
back