「う、うぉぉ〜〜〜!!スゲーッ!!めっちゃ美味そうっす!!」




出来上がった料理たちを前にして、虹村億泰は興奮したようすで言った。
食卓の上にはロールキャベツ、ビーフシチューとシーザーサラダが綺麗にお皿に盛りつけられていた。食卓にこんなに立派な食事が並んでいるのはもう思い出せないほど遠い昔のような気がする。



「お口に合うかわからないけど・・・さぁ!じゃあ冷める前に食べようか。」


ニコッと笑いながらナマエは言った。



2人は食卓について食事を始めた。いっただきまーす!!!とやたらドでかい声をあげて億泰はナマエの作った料理を口いっぱいに頬張る。

そんなに一気に頬張ると喉詰まらせるよ億泰くん、とナマエは苦笑した。


もきゅもきゅ・・・
ゴックン


「〜〜ぅんめェ〜〜〜〜〜ッ!!!」



億泰くんはパアアっと表情を輝かせてそう感想をこぼした。


「ほんとう?良かった。」ナマエは優しく微笑んだ。


「うまいッす!!こんな上手い料理、久々に食った気がするッスよォ〜〜」


手が止まらない様子でガツガツと料理を食べる億泰くん。さすが食べ盛りの男子高校生だ。ハタチオーバーの私にとってはそんな威勢の良い食べっぷり、見ているだけでお腹がいっぱいになりそうだ。


「おかわりもあるからね、ゆっくり食べてね。」


ブンブンと首をタテに振り返事をしながらも食べる手を止めない彼にナマエはどんだけお腹減ってたの億泰くんと笑いがこぼれる。


しばらくお互い無言で食べ進めていると突然億泰くんの手がピタッと止まった。


「・・・・?どうしたの?」

億泰くんは下を向いている。



どうしたんだろう・・?実は料理が口に合わなかったのかな、とヒヤヒヤしながら彼の様子をうかがう。



そこでナマエは驚き、硬直した。



「ぅっ、ぐすっ・・・」



億泰くんが泣いているではないか!!


「ど、どどどうしたの?!!そんなに料理不味かった?!」



うおぉ〜〜〜ッと男泣きする億泰くん。あたふたして困惑するナマエ。



「ッッす・・違ェッす・・・ナマエさんの料理は文句なしに美味しいっス。こんな家庭の温かい料理食べたの本当に久しぶりで・・なんかわからねェけど涙が止まらねェんす。」

「億泰くん・・・」


億泰くんの家庭の事情はわからないけれど、私の料理が彼の記憶の何かを刺激してしまったことはわかった。私も父親を早くに亡くしてしまったから、家族のいない寂しさや気苦労は想像に難くない。特に彼はまだ高校生な上、今まで苦悩や寂しさを誰かに伝えることも満足にできない境遇だったのかもしれない。私はポケットからハンカチを取り出し、彼のそばに静かに近づいた。そしてそっと彼の目元をハンカチで拭った。億泰くんはビックリした様子でこちらを見た。


「・・・私、億泰くんの友達になっちゃだめかな?仕事でこっちに赴任してきたばっかりで知り合いとかもいないし毎日結構寂しいんだよね。たまにで良ければこうして料理も作るし。・・・駄目かな?」


億泰はきょとんとした顔でナマエを見た。そしてその後ニッと笑って言った。


「もちろんッスよ!ナマエさんと俺はもうダチッす。俺も正直学校じゃァ浮いてるし友達もいないんす。こんなオレで良けりゃ〜〜いつでも話し相手になりますよォ!」


「本当?ありがとう!・・・これからよろしくね。」



こうして私と億泰くんはなんとも奇妙な縁で、正式にお友達となった。




「んにしてもヨォ〜〜〜〜、ナマエさん、こんな荒くれ者で頭もワリィ俺と友達になりたいなんてよぉ〜、物好きだな!」


「億泰くんは優しくて良い子だよ。」


ナマエはほほえみながらそう言って無意識に億泰くんの頭を撫でた。


「ちょ!ナマエさんッ!子供扱いはやめて下さいよォォ〜〜ッッ」


億泰くんはバッと手を振り払う。顔が赤くなっている。


「あっごめんごめんっ、ついつい・・」


高校生の男の子にする事じゃあなかったと反省しつつ、再び食事を再開した。


「そういえばナマエさんよォ、こないだ聞きそびれちまったんだけど、ナマエさんのスタンドはどんなものなんスか?」


「あーーー・・・それねぇ、」

ナマエは少しバツが悪そうに言った。



「今俺の兄貴がよォ、スタンド使いを増や・・じゃねェや!探しててよォ・・・ナマエさんもスタンド使いならどんなスタンドなのか見せてくれねェッスか?」


「ふぅん・・?そうなんだ。・・んーー・・。見せるのはいいんだけどここで出すにはちょっと迷惑がかかるからまた今度、別の場所でってことにしてくれないかな?」


「別の場所・・?イイッすけど、どこでならいいんスか?」


「誰もいない山とか草原とか林とかかな・・・うん」

「? わかったッス。じゃあ今度見せてもらうっつーことで。」


なんとなく遠い目をしてそう話すナマエに疑問を抱きつつも、了承して食事を続ける。




夕食を食べた後、送りますよ!と言ってくれた億泰くんの進言に甘えてアパートまで送ってもらい帰宅した。別れ際億泰くんがもじもじしながら「今日は美味しい料理ごちそうさまッした。・・・また作りに来てくれると嬉しいッス・・・」と言ってくれたので私は笑顔で了承した。


「おやすみ億泰くん。」

「おやすみッス!ナマエさん。」



こうして晴れて友達となった億泰くんとお別れした。





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翌日、私ミョウジナマエは土曜日だったので時間に制約されることなく幸せな心地で朝寝坊していた。


すると外からチャイムが鳴った。


ピンポーン・・

ピンポーン


ピンポーン

ピンポーン



一度目は熟睡して完璧に気付かなかったチャイムも、連続して鳴り響けばさすがにナマエももぞもぞして目を覚ました。


「ふわ・・・誰だろ・・」


時計を見ると午前10時ちょっと前だ。誰だろう、宅配便かなんかかな。
ふわふわした寝ぼけた頭で目をこする。
「はいはい今でまぁす」と眠気まじりの声で来訪者に告げる。


ドアのロックを外しガチャ、と扉をひらくと外から光が差し込む。



扉の前で立つ人物を見てナマエは驚いた。


「お、おはよーッス・・・ナマエさん・・」


「ふぇ?!・・・億泰くん?!それと・・・・?」



目の前には昨日会った億泰くんと、もう一人別の男性が横に立っていた。
億泰くんよりも背が高く、大柄の体格で改造した学ランを身にまとっている。


ナマエは、あぁこの人が億泰くんのお兄さんかとまだ覚醒していない頭の中でふと思った。




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