「ここが、虹村くんのお家・・・?」



とある物語



あのコンビニ前での事件の後、ちょうど異変に気づいてこちらへ来てくれた巡回中のお巡りさんに、事のあらましを話して(チンピラ達の車のナンバーもしっかり報告した)、少年をどうしようかということになった。

彼の学ランのポケットに入っていた財布に住所の載った生徒手帳があったので、それを頼りにお巡りさんと私で彼をお家まで送り届けることになった。
さすがに一人では自分よりも体格の大きい彼を運ぶことはできないので、お巡りさんがいて本当に助かった。しかも彼の家はコンビニから割と近い住所だったので、二人がかりで彼の家まで無事たどり着くことができたのだった。


私を助けてくれた恩人の少年は、虹村億泰という名前だった。

もとはといえばすべて私の不注意から始まったことで、何の罪もない男子高校生を巻き込んでしまい本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。虹村君ほんとうにほんとうにごめんなさい。

きっと彼のご両親はご立腹されるだろう。大事な息子を傷つけられたのだから。
許してもらえるかわからないけれど、誠意をもって謝り倒そう。


そう決意した矢先、彼の家のある住所の場所までたどりついた。
目の前には人が住んでいる感じがしない立派だが少し古い一軒家があった。

「ここが・・・虹村くんのお家・・」

とりあえずチャイムを鳴らしてみる。しかし返事がまったく帰ってこない。
そもそも家の電気がついていない。

「ほ、本当にここなんですかね?」

お巡りさんと顔を見合わせる。しかし何度確認してもここが彼の家のはずだっだ。
お巡りさんは虹村君のポケットを探り、キーケースを取り出した。

「今日はご家族が留守なのかもしれませんね。このままというわけにもいきませんので、不躾ではありますが彼が持っていた鍵を拝借して彼を中に運びましょうか。」

そうお巡りさんは言った。私も少し考えたのち、そうですねと答えた。
勝手に人様のお家に入るなんて不躾もいいところだが、お家は誰もいないようだし、
それに虹村君を早くちゃんとしたところに寝かせたいと思っていたので同意した。

家の鍵はガチャ、とすぐに開いた。やはりこの家で間違いないということはわかった。
中は真っ暗で人の気配は全くしなかった。

お巡りさんと二人で頑張って虹村君を運ぶ。いい加減腕が死にそうになってきた。
人様の家を探索するわけにもいかないので、とりあえず一番近くのリビングに入り、そこにあった大きいソファに虹村君を乗せる。
ふーっとお巡りさんと私は息をつく。腕がケイレンしそうなぐらい疲れていた。

散々付き合わせてしまったお巡りさんにお礼を言い、ここからは私一人で彼の様子を見ますと伝えた。私よりも何倍も疲れただろうに、お巡りさんは笑顔で「何かあったら連絡ください」といい巡回に戻っていった。なんて良いお巡りさんだろう。

感動しながら、静まり返った室内を見回す。
広く、家族が住むのにちょうどいいサイズのリビング。だけど何故だろう?あまり生活感がない。普段みんなが集まるリビングのはずなのに、どうしてだかそんな雰囲気が感じられない寂しいかんじがした。

まぁそんなことはいい。虹村君を介抱する方が先決だ。
キッチンをお借りして持っていたハンドタオルを濡らして彼の腫れた顔を冷やす。コップに水を注ぎ虹村君が寝ているソファのすぐそばのテーブルに置く。

彼のすぐそばに寄り添って顔をのぞきこむ。規則正しい呼吸をしているが殴られたらしい頬は痛々しく腫れていた。
あああごめんなさいごめんなさいと心の中で謝罪しつつガラスを扱うがごとく優しく冷やしタオルを頬にあてる。

その時、虹村君のまぶたがピクッと動いた。次第にまぶたがゆっくりと開く。何回かパチクリと瞬きをしたのち、頬の痛さに軽く顔を歪めながら目線を動かした。
私の存在に気付いたらしい。彼は「きょとん」といった表現がぴったりな様子で私の顔を見た。


「あ・・れェ?あんたぁ・・さっきの・・・・」



「すっすみませんでしたーーーーーーーーー!!!!」



私はそれはもう見事なぐらいの土下座を披露した。






私は虹村君にここまでのいきさつを説明した。殴られてちょうど打ち所が悪く失神してしまったこと、お巡りさんと私でお家まで虹村君を運んだことなどをだ。



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