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「君、四月からM県支社に移動が決定したから。」
と、ミョウジナマエの会社の人事課長が告げたのがつい先程。
とある物語・・・・・
イドウ・・4月・・M県・・・
今さっき自分に告げられた言葉を頭で反すうしたのち、ナマエはこう呟いた。
「それっても、もしや平永課長、左遷ですか?」
となりの席の一個下の後輩がぶっと噴き出した。
「あはは!先輩、さ、左遷て!そんなことあるわけないですよ!」
平永人事課長はゴホンッと咳をした後こう言った。
「うむ。これは左遷じゃなく栄転だよ。君は優秀な人材だと見込んで新しい支社の立ち上げのメンバーになってもらいたいと思ってね。」
「は・・はぁ・・それでM県というわけですか・・・」
「将来管理職になるためにも、ここいらで本社から離れて経験を積む時がきたというわけだよ!」
課長は至極嬉しそうに言った。
そんなこんなで、ミョウジナマエは入社4年目にして移動を命じられることになった。本社がある東京を離れる時がやってきたのであった。
「まぁ・・そろそろ移動のシーズンだとは思ったけど、」
いささか急じゃないか。ナマエはそう思った。
そしてなんとなく良いように言いくるめられたような気もする。
前々から東北に新しい支社を立ち上げるとかなんだとかは小耳に挟んでいたけれど。
まぁ決まったことはしょうがない。M県に関しては正直縁もゆかりもないけれど、住めば都、22年間暮らしていた東京とはまた違った魅力があるだろう。
我ながら結構前向き、と自分自身に苦笑したところで自宅のパソコンを立ち上げて今度自分が赴任する町の情報を調べにかかった。
あっという間なもので、移動を命じられてからあれよあれよと時が進み、送別会だの仕事の引き継ぎだの忙しくバタバタとしているうちにもう4月を迎える直前まできていた。
ビュウッ
「うーー寒いっ」
新幹線を使ってM県に到着し、外に出るとまだ冬の名残のような春風がナマエを吹きつけた。
まだ桜は咲く気配はない。
初めての土地に初めての街。
いろんな意味で上手くやっていけるかは不安だけどやっていくしかない。
ナマエはぎゅっと握りこぶしをつくり、目的地へのバスを探した。
「えぇと、杜王町行きのバスは・・・と」
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