「うわあ・・・」
「・・・綺麗」
町外れにある小さな丘の上で詩音達が木々の間から空を見上げている。
〓数日前〓
「かーずーね」
名前を呼ばれて振り返ってみると慧がこちらにむかって走って来る。
「どうした?慧」
「来い!」
慧はそれだけ言うと和音の腕を掴み走って行く。
それをみていた詩音は、夜になれば帰って来るだろうと思いたいして気にとめなかった。
だが慧と和音は夜になっても帰って来ない。
「ねぇ、和音と慧わぁ?」
「昼にどっか走って行ったよ」
そう答えて一週間たったが全く帰ってくる気配がないので探しに行くことにした。
町の人に聞くと和音と慧は雑木林に入って行ったという。
その雑木林に行ってみて驚いた。
林は紅葉で真っ赤に染まっていたのだ。
「わぁ」
「ねぇ!あそこに獣道があるよ!」
「行ってみましょ」
この時期午後4時にもなると冷えてくる。
だが、そんなのも気にせず詩音達は林の中に入って行った。
しばらく歩いていると´カサッ´という音がした。
物音はどんどん大きくなっていき、詩音達の前でとまった。
警戒している詩音達の前に現れたは、一匹の猫。
「ソラ!」
ソラとは、山本家が飼っている猫だ。和音達と同様数日前から姿が見えなかった。
ソラは詩音に向かって跳びその腕に収まった。
「もーどこに行ってたの?もしかして和音達も此処に居るの!?」
ソラは´ニャア´と小さく答え再び茂みに入って行った。
ソラを追う様に歩いて30分、日が沈みかけている。
「「「「「!」」」」」
詩音達の目の前に大きく開けた所があり、一面にすすきが生えている。
そこに夕日がさしてすすきがオレンジ色に染まっていた。
「わぁ・・・凄い・・・」
「あれぇ?詩音に利音、鈴音、苓花、聖花って全員いるじゃん」
上をみると木の枝に和音が座っていた。
「あー和音!こんな所で何してたの!?」
「慧ー、皆来ちゃったよー」
和音は斜め前にある木のちいさな家に向かって叫ぶ。
「あー、早かったな」
「けーいー、あんたねぇ・・・」
「なんだよ」
「いつもいつも、仕事サボってー」
降りて来た慧に苓花はいつもの様に小言を言い始める。
しばらくその小言を聞いていた慧の肩から、一匹のフェレットが顔を出した。
「なんだ、起きたのか。」
「その動物・・・」
「慧にすごく懐いてるんだ。・・・それより見て!」
和音はもう暗くなった空に向かって指を指した。
夜空に浮かぶ大きな月と満天に広がる星が輝やいている。
さわぎ始める詩音達を見ていた慧は近ずいてきた和音に
「満月でよかったな」
と笑い
「うん。」
と答えた和音も詩音達を眺めて笑っていた―――。
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日和
2007.12.25
(2017.04.01)