恋愛は人に頼るな



※どこにも着地しません!夢主が焦るだけ。
※しかも柚葉ちゃんと喋らない。

 すごく、すごく、すごく気まずい。八戒が勘違いしている。私の伝え方が悪かった。「強くてカッコよくて自分よりも強い相手に立ち向かえて、私のことを守ってくれそうな人」。照れくさくてぼかしたのがいけなかったよ。もともと自分だけで解決したかったのに八戒にバレたのが決行の2週間前である。つうかあの、10年来の付き合いを過信した。
 8月の初週の日曜日には武蔵祭りがある。私はそこで一大イベント、告白を敢行する予定なのだ。何日も前から着る浴衣や髪飾りを決めて、シミュレーションをした。私は彼女の好きなところをいっぱい並べる練習を入念にしてさっさとベッドに入った。胸がどきどき鳴ってうるさくなってきたから熱を逃すように窓を開けて寝た。
 そして、お祭り当日の集合時間15分前に、私は今まで無視してきた小さな違和感の正体に気づいた。なんとなく八戒と話が噛み合っていなかったことに。
 今日は八戒が私と柚葉ちゃんを二人きりにして時間を作ってくれるという段取りなのだが、八戒がなんと事前に相手に探りを入れるというファインプレーをしたようで、いける!と文字通り背中を押されてしまった。しかし、一方で私は頭に庭園を持っているほど楽観はしていなかったから、ここで哀しくも冷静になって「そんなことある?」と聞き返してしまった。私が好きなの、あんたの姉ちゃんだよ。勝率ほぼないと思う。ホームランバーのほうがまだ当たると思う。八戒はサムズアップを作ってなまえかわいいし大丈夫などと言っていたが、今考えると別の誰かに探りを入れて好感触があったかもしれなくてかなりやばい。
 八戒と柚葉ちゃん、三ツ谷くんとその妹たちを遠目に見つけたとき、私の懸念は確信になってしまった。普段から集まっているメンバーだから何もおかしくはない。……やっぱり三ツ谷くんか。三ツ谷くんもカッコいいもんな!
 向こうがこちらに気づいていないのを確認して私はなんともない感じで、待ち合わせ場所から離れた。汚いのを若干気にしつつ、躊躇っている暇は無いと一番近くの仮設トイレに飛びこんだ。一行書いてから指がボタンのうえを彷徨って埒があかないから全部消した。考えうる限り一番簡素な文面で八戒を呼び出す。トイレから出て彼を待った。すぐに彼はやってきた。
「何、作戦変更?」
「そうじゃないんだけど」
 もっと大きな、根幹に関わってくることなんだけど。私は半泣きだ。
「そういえば、姉ちゃん、今日のこと知らなかったんだけど」
「言ったの!?」
「姉ちゃんの協力もあったほうが上手く進むだろ。それに知ってるもんだと思ってたし」
 これはぼかした私がわるいのだ。柚葉ちゃんに告る勇気をこの日まで取っておいた私が。
「もしかしてなんだけど、協力してもらってとてもありがたいんだけど、八戒が呼んでくれる人は……柚葉ちゃんで合ってる?」 
「え?」
 八戒がフリーズした。これは理解してもらうのに結構かかりそうだ。

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