新人歓迎!アットホームな職場は血の海



「いやはや履歴書なしでも働けるってこういうこと……人手が足りないと言っていたのも頷ける……おかしいとは思ったんだよねぇうんうん」
 合点がいった。この店の新人の私はサブマシンガン片手に薄く笑っていた。駆け巡る銃弾、銃弾、銃弾……。
 従業員の他にも見知らぬ顔ぶれがいた。頭数を揃えたようだが弱い。単身で私の3日でできた“仲間”を無残に殺していく黒外套の男。
 私は事情も聞かされず、よくわからないまま厨房にてサブマシンガンを渡され、戦場と化したお座敷に赴くこととなった。
 早速私は頭をかかえていた。
 ひとつ目は帰れる兆しが全くもってないことと、ふたつ目は現にこの状況。帰ると言っても住み込みなので、帰る場所がなくなると言ったほうが正しい。給料は低いけど特に仕事以外何もさせられないし、3食ついてるしいい職場だった。これは正直、きつい。お座敷のテーブルはその中央辺りから叩き割られて、サトウ(多分偽名)さんは首から下が別の死体たちに埋もれていた。仕切りの障子はズタズタに破壊され、生暖かい血の臭いが充満している。ミステリ好きはたまらない猟奇殺人事件現場のようで不快極まりない。私はこの状況を横目に透明のまま、店内を壁に沿って外を目指していた。「おい!新人!どこ行った!!」
 店長、叫ぶなよ。もう気づけば一番豪勢な装備の店長と私とあとふたりだった。
「まだ居るのか……」
 刹那に二人の首がとんで壁に当たって白いものがいくつか床に散らばる。
「しん……じん……」店長はそう呟いて思い出したように銃を構えなおそうとした――黒い刃により肩から右斜めに線が入り、店長が裂けた。きれいすっぱり切れた胃腸から内容物が垂れている。血はコンクリートに染み渡っていく。
「その新人とやらを探さねばなるまいか……」
 黒外套の男はまるで事務作業を任されたような口ぶりで造作なくテーブルを端に寄せ、カウンターを一刀両断して、厨房の壁に大穴をあけた。私とは真逆の方向に進んでいく彼を見て、好機とばかりに使う必要のないサブマシンガンを空に投げる。私の手を離れた瞬間、サブマシンガンは塵に変わった。この人どれだけ気がたってるのよ。大小様々な刃が空を切った。私が先刻居た場所で。小さな舌打ちが聞こえた気がした。
 急などくっどくっという音に驚く。私の中から……意識が途切れるような、ああなんだか酩酊ににている。 心臓が大きく跳ねた。内臓の壁を突き破って腹から出てくるんじゃないかと思うほどに。
 私は、喀血していた。血の味が徐々に強くなる。床に垂れた血が姿を見せる。
「そこか」
 三日月を口元にたたえて彼は言った。異常だ。
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夢主の能力は透明になれることです。

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