拐かし婚/鳴狐
 神域、と短い返事を与えられて白んだ。そんなことができたのか。刀装をつくるのも上手いし器用だしな、となぜか変に感心した。私たちの本丸はみなが寝静まったころ、時間遡行軍の強襲に遭い、そのすべては斬り捨てられたそうだけれど、本丸としての役目を遂げることができなくなったそうだ。刀剣たちには負傷はした者はいるが、折れた者はいなかったとも鳴狐は教えてくれた。たまたま近侍だった彼が私の無事のために閉じ込めた。いま私のいる部屋は使う予定など毛頭なかった、というようになんとも殺風景である。私はふかふかの布団から体を起こしてあたりを見渡した。質素な調度があるだけだった。例外が一つだけ、正面に床の間があり、その手前の衣桁に立派な着物が掛けてあった。かたちからするに女物だろう。色が派手ではなく、特別目立つわけでもないが、上品な艶が漂っていた。
 
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テーマ「人外ファンタジー」
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