七夕/露伴
星が綺麗に見える。彼女の誘い文句はそれだけだった。
「君の言うとおりだったな」
彼女はよく動く眉を下げて苦く笑った。
「七夕は雨が降りやすい。こんな日に逢い引きするのも酔狂だよな」
雨音が車の中を反響する。
「昼は晴れてたから、期待したんですけどねえ」
花火まで買ったのにと彼女は肩を落とした。口元だけ笑みのかたちを保っている。
「隣に行っていいですか」
「わざわざ聞かずに黙ってくればいいだろ」
これ、車内らしいよ!
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