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キューブ状ではなく薄くスライスして生地にのせる。
包丁を持つ手が危なげでなくなって数年経ち、オーブンをあたためるタイミングはもう完璧だ。
わたしは彼女にアップルパイを焼いて、遠出して紅茶をデパ地下で買う。
それだけ彼女はわたしにとって大切な友人である。最初は紅茶に合えばいい、といっていたのが嘘みたいに、今ではインスタで見つけたお菓子のURLを脈絡無く送ってきて、ひとこと「食べたい」。
食べるのがもったいないような凝ったお菓子のハッシュタグを複数フォローしているディタがすごくかわいい。
最近あったいいことを聞けば、彼女は迷いなくわたしと過ごす時間だとあのやさしい低音でこたえて、わたしを喜ばせた。
彼女のそういうところがわたしはずうっと好き。彼女はずるい。わけへだてなく「桜塚ディタ」だから、わたしは彼女の特別でいるために、アップルパイを焼く。飽きたといわれるまでは「特別」。
『アップルパイ』