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 割り当てられた部屋がひとりではかなしいような広さで、はたらいている人のほうが多い時間帯を選んだことを後悔した。
 彼女の十八番を彼女の歌い方で、真似だけは随分と上手くできてしまって、間奏に飲んだメロンソーダが喉に斑点をのこしたいらしく染みた。私は彼女の前ではいつも喉を痛めたくないといって烏龍茶をコップ七分目まで注ぐ。私たちでフリータイムぎりぎりまで曲を詰め込んだ。ただ、もとの予定をのけてまで一緒にいる時間を増やせない、でも、少しでもながくいたかった。なじまないラブソングはとっくに流行に乗れなくなっていた。
 自分の気持ちをもっと深いところに押し込んで、もっとやわらかい感情か、それともかたくいつふれても変わらぬかたちになるまでほおっておこう。電源が入ったマイクが膝に当たって鈍い音をたてた。

『月が歩いてくる途中空にまだのこってた』
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