この前のインスタライブで、久々に見たディタさんは髪が黒染めされていた。頭の横にふきだしが出てびっくりマークとはてなマークが100個くらいついたと思う。内容はこれから公演ができなくなることについて。ヘビーだ。
 その夜、私たち同志の会は緊急会議を開いた。たぶん会社のミーティングより真剣だ。外にいてマイクが使えなかったメンバーがいたのでチャットで話した。
以下はチャットログ。
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***「この状況で、我々はどうやったら彼女を支援できると思う?」
柚木『DMでAmazonの商品券を送りつける』
榎本さゆり『早まるな! 劇団に問い合わせてみよう』
***『電話番号を調べるためにアクセスしたら劇団のHP、未だにFlash使ってんだけど…』
Aki『もう見れない笑』
Aki『講のカネ、今回の苦境をくらった人に割り当てたあとにディタ様に渡してしまおう』
榎本さゆり『その制度地味に生きてたんだ』
柚木『公演に影響されてはじめたやつじゃん。今いくらあんの?』
Aki『10万ちょい』
***『ちょっと収入減ったけど、まだ大丈夫』
榎本さゆり『うちは開発だから無傷に近いかな』
柚木『公務員は最強』
Aki『FXで5000円が80万になった。勝ち逃げ』
***『とんでもないのがいた』
柚木『マジか』
榎本さゆり『運良すぎ』
Aki『じゃ今月は***にあげて、あとはディタ様に寄付?』
柚木『おっけ』
***『本当に助かります……』
榎本さゆり『私も前助けてもらったしお互い様だよ…??』
榎本さゆり『あっ!絵の字が?に文字化けした』
***『笑う』
***『ありがとうございます、大事に使います』
Aki『使い途が決まったところで、この前のインスタライブの件なんだけど……』

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 黒髪の桜塚ディタ。ファンに激震が走る。今まで銀髪のディタさんばかり見てきた。彼女の髪は劇場の照明のオレンジ色をうっすら反射させて、舞台上に光を散らす。
 少し見ない間に何があった。自粛期間中、何をしていた。ゲリラでインスタライブをはじめるとファンが死ぬ。私は会社がたまたま休みだったから見れたものの。同志の友人Aは私のLINEに即レスして、自ら雑用を引き受けて会社の倉庫の隅でイヤホンをつけてライブを見たらしい。
 桜塚ディタを好きな人のハマったきっかけは人それぞれだが、私は小さい時に見た少女革命ウテナが原因だと思う。王子様にはなれなかった。けど、私は桜塚ディタに出会った。会社でこつこつ働いてお金を稼いでホテルのスイーツ巡りをするのが趣味だった。確信めいたものを感じながら初めて公演チケットを取ったとき、私はそのあと週3で同じ公演を見ることを私は知らなかった。人生そんなもんなんだわ。



『Colored』
210607 推しカラー記念
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