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世の中のきらめきははけ口を具申して、恋を経由して、私と席をひとつ挟んだ隣に降りかかる。普段は観られる側にいる人だ。名前だけ。桜塚ディタ。今日は「観る」人は、柄物の砂漠の夜空と同じいろのスカーフを肩に掛けていた。その下の、70年代みたいなグリッターの効いたトップスはそでのフチにぽつんと丸い焦げ跡があった。
意外だった。吸う人にみえなくて、ダークブラウンに塗られたぽってりとした唇に目が行った。私は今なんだかのぼせている。勝手に拾った波長でどこかの無線に繋がっている。
彼女はひたむきに舞台に五感すべてを傾けていた。
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