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 ディタと見るはずだった映画を、数年越しに動画配信サービスで垂れ流している。
 見に行こうかと話しただけで、私は自分の分だけおまけ付きの前売りまで買ったけど、結局机上の予定にすぎなかった。簡単な濡れ場があって、映画館に足を運ばなくてよかった。はじめて二人で見る映画はもっと明るくてハリウッド好みの男女の恋愛とか誰かの死とか複雑な感情抜きの、相続した農場の借金返すのに奮闘するみたいなアウトラインで、客が十中八九当たりだったと感想を零すなか、私たちだけつまんなかったねと言葉を交わして、その足で旧作のDVDを借りにいく。あの頃はレンタルビデオが旺盛を極めていた。新作は借りるのに一週間待たねばならなかった。最近は「あの頃」ばかり私の記憶で光を放っている。ディタとは数年もう会っていない。

『タイトなダイナマイト』
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