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 絶対に友人に会いに行ける顔ではなかった。
 わかって付き合って振られたので笑ってください。と言ってマジで無神経なくらい大笑いしてくれる友人がいたのだが、コールを繋げてしまったのはそれと真反対な人で、私のこんな話を聞いてなんにも得にならないだろうに、そっと背中を撫でてくれる。結末は予想してなんどもリハーサルをした。泣くに泣けなくなった。切り上げ時を私が見計らう。落ち合うのが遅くてなんだかんだ終電が迫っていた。酔ってもいいだろうか。強くないのですぐ寝落ちてしまうが。寝たら私をどうするんだろう。ディタさんに軽く肩を叩かれてタクシーの運転手に寝ぼけながら呂律のまわらないくちで住所を伝えて、窓の外をぼんやり見やって帰る気がする。そうしたらどうでもいい男のことを忘れて自由になれるかもしれない。ディタさんのやさしさにうもれて床に就きたい。
 じっと彼女の腕のあたりを見つめていた。タクシー代、彼女に渡す分も含めていくらあったら足りるか酒気でままならない計算をした。

『スキャット』
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