「ねえ長官、私今から、嘘をつきます」
はあ?と言わんばかりの目で長官が私を見る。またくだらないことでも考えているのか、とそのじっとりとした視線で文句を言う。はい、その通り。くだらないことを考えつきました。
「私、長官が大好きです」
にっこり、笑って言ってみせると長官がまだ半分程コーヒーが入ったカップを床に落とした。ガシャ、とカップの割れた音が響く。
「おい。それは、どういうことだ」
やっと絞り出した、みたいな乾いた声で長官が呟いた。私は今、嘘をつくと宣言して、あなたが大好きと言った。つまり、そういうことです。どうだ、びっくりしただろう。
「……嘘、だったのか?」
「はい、嘘です」
「今までの、全部?」
「いいえ、今のだけです」
「は?」
「今日はエイプリルフールですね」
「は?」
「つまり、最初に嘘をつきますって言ったのが、嘘だったんです!どやぁ」
「おい、ファンク。手加減しなくて良いぞ」
「あ、え、ちょっと待ってごめんなさいごめんなさい!」
マジギレ、まさしくマジギレ。ザ、マジギレ。長官が鬼の様な形相で立てかけてあったファンクに手を掛け、ファンクもまたパオオと鳴いてそれに応えた。
「ファンク!ファンク!ご飯あげないよ!長官も!もうコーヒー淹れませんよ!」
「うるせえ、怒った」
「ごめんなさい、本当に反省してますから!許してくださいー!」
「許さん」
「ごーめーんーなーさーいー!」
普段のドジっ子極まる長官の動きからは想像出来ないようなフットワークで、じり、と壁際に追い詰められた。挙句、長官が私の逃げ道を塞ぐ様に勢い良く壁に手をついた。こ、これが壁ドンですか?そうなんですか?こんな状況にも関わらずドキドキしてしまい、それを悟られないように私は精一杯申し訳なさそうな表情を作って長官を見上げた。ら、
「あ、あれ?長官、」
泣いてる。いつの間にか私の両肩に彼の腕が回されていて、それに気づくと強く抱きしめられた。ぐす、と鼻を啜る音が耳元で聞こえて我に帰る。
「ご、ごめんね。泣かないでください、長官」
私に縋り付くようにして体を震わせる長官に、罪悪感でいっぱいになる。まさかそんなにあなたを傷つけるなんて、思ってもみなかった。ましてや泣かせてしまうなんて。
「……泣いてねーよ、ブァーカ」
そんな悪態をつきながらも、長官は私をより一層強く抱きしめたまま離さない。ああ、もう、本当に敵わない。私はあなたが、可愛くて可愛くて、仕方が無いです。こんなこと言う資格なんて、無いかもしれないけど。
「長官、……大好きです。私の頭のてっぺんから足の爪先まで、みんなあなたのものですから」
「……本当か?」
「本当です」
「じゃあ俺の好きにして良いよな」
「え、」
私の肩口に埋めていた顔をパッと離すと、長官は意地悪そうにニヤリと笑った。あ、え、ちょっと。人の事言えないけど、今の嘘なの!?演技だったの!?
「 覚悟はいいか?」
足元から掬い上げるように抱きかかえられとりあえず抵抗してみるも、見上げた長官の頬に一筋の涙の跡が見えて。何も言えなくなった私は反省しつつ大人しく彼の細い首に腕を回した。
うそつきのなみだ
はあ?と言わんばかりの目で長官が私を見る。またくだらないことでも考えているのか、とそのじっとりとした視線で文句を言う。はい、その通り。くだらないことを考えつきました。
「私、長官が大好きです」
にっこり、笑って言ってみせると長官がまだ半分程コーヒーが入ったカップを床に落とした。ガシャ、とカップの割れた音が響く。
「おい。それは、どういうことだ」
やっと絞り出した、みたいな乾いた声で長官が呟いた。私は今、嘘をつくと宣言して、あなたが大好きと言った。つまり、そういうことです。どうだ、びっくりしただろう。
「……嘘、だったのか?」
「はい、嘘です」
「今までの、全部?」
「いいえ、今のだけです」
「は?」
「今日はエイプリルフールですね」
「は?」
「つまり、最初に嘘をつきますって言ったのが、嘘だったんです!どやぁ」
「おい、ファンク。手加減しなくて良いぞ」
「あ、え、ちょっと待ってごめんなさいごめんなさい!」
マジギレ、まさしくマジギレ。ザ、マジギレ。長官が鬼の様な形相で立てかけてあったファンクに手を掛け、ファンクもまたパオオと鳴いてそれに応えた。
「ファンク!ファンク!ご飯あげないよ!長官も!もうコーヒー淹れませんよ!」
「うるせえ、怒った」
「ごめんなさい、本当に反省してますから!許してくださいー!」
「許さん」
「ごーめーんーなーさーいー!」
普段のドジっ子極まる長官の動きからは想像出来ないようなフットワークで、じり、と壁際に追い詰められた。挙句、長官が私の逃げ道を塞ぐ様に勢い良く壁に手をついた。こ、これが壁ドンですか?そうなんですか?こんな状況にも関わらずドキドキしてしまい、それを悟られないように私は精一杯申し訳なさそうな表情を作って長官を見上げた。ら、
「あ、あれ?長官、」
泣いてる。いつの間にか私の両肩に彼の腕が回されていて、それに気づくと強く抱きしめられた。ぐす、と鼻を啜る音が耳元で聞こえて我に帰る。
「ご、ごめんね。泣かないでください、長官」
私に縋り付くようにして体を震わせる長官に、罪悪感でいっぱいになる。まさかそんなにあなたを傷つけるなんて、思ってもみなかった。ましてや泣かせてしまうなんて。
「……泣いてねーよ、ブァーカ」
そんな悪態をつきながらも、長官は私をより一層強く抱きしめたまま離さない。ああ、もう、本当に敵わない。私はあなたが、可愛くて可愛くて、仕方が無いです。こんなこと言う資格なんて、無いかもしれないけど。
「長官、……大好きです。私の頭のてっぺんから足の爪先まで、みんなあなたのものですから」
「……本当か?」
「本当です」
「じゃあ俺の好きにして良いよな」
「え、」
私の肩口に埋めていた顔をパッと離すと、長官は意地悪そうにニヤリと笑った。あ、え、ちょっと。人の事言えないけど、今の嘘なの!?演技だったの!?
「 覚悟はいいか?」
足元から掬い上げるように抱きかかえられとりあえず抵抗してみるも、見上げた長官の頬に一筋の涙の跡が見えて。何も言えなくなった私は反省しつつ大人しく彼の細い首に腕を回した。
うそつきのなみだ