「ひっ、」


はぁはぁ荒い息をする吹雪の我慢汁でぬるぬるに濡れた手にひんやりとした手が触れた。冷たさに思わずもれた声。しかし、冷たい手にそのまま扱く手ごと強く握られて吹雪は声をあげた。


「やぁッ、」

「ねぇ、なにしてるの。不法侵入者さん。」


動きを止めた我慢汁まみれの手から、そのままヒロトの手にも我慢汁がしたたっていく。しかし、動きを止められてしまったから声を出したのではなく、耳に吹き込むように囁かれたヒロトの声に声を出したのだった。


「俺の手と、俺のベッドが汚れているのはどうして?」

「ちっ…ちがうのっ!」


どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。見られてしまった。恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい。恥態を見られてしまった吹雪は背中がひんやりと冷えていくのを感じた。冬の寒さのせいではない、そんなことはわかっていた。


ヒロトは自分の下腹部がずん、と重くなるのを感じていた。本日も、商談をなんとかこぎ着けて仕事をおこなってきたのだった。遣り手とは噂されてもやっぱり、商談が得意だとは思えなかった。そうやって、遣り手なりに疲れて帰ったところで驚いた。部屋の中から自分を呼ぶ、誰かの声。だんだん近くなる、寝室から聞こえる声。おそるおそる、息を殺して近づいていくと、スラックスを半脱ぎの状態で腰を突きだし自分の名前をしつこく呼びながら、たらたらといやらしい液を垂らす吹雪の姿が、そこにはあった。突然の状況ながら、興奮した。しかし、平静をよそおい吹雪を問い詰めた。残念ながら、返ってきた答えはヒロトの期待していた甘いセリフではないが、言い訳がましいその言葉が、むしろヒロトの野心を掻き立ててそそる。


「ヒロトくんの、お家の鍵届けにきただけなの。だっ、だからぁ……これは違うの!!」


吹雪のむきだしになっている柔らかそうな尻肉を、思い切りつかんで感触を楽しむようにして、揉みしだく。


「……なっ、ヒロトくんっ……やめて……っ」

「本当にそれだけ?違うよね。いや、違わなかったとしてもさぁ、違っちゃったわけだよね。」


吹雪を責め立てるような口調で問いただす。吹雪としては、冷たい目線を送られながら尻を揉みしだかれているのだから、恐怖いがいのなにものでもないわけだが、ヒロトとしては冷静になれと無表情を取り繕うおうとしている顔と、興奮と触りたいという欲求とが入り交じった行動をとる己の手とで焦る以外のなにものでもない。


「でもねっ、続けてもいいよ。俺、ずっと君とこうしてみたかったから。」


口走った言葉にしまったと思ったときにはもう遅い。




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