特に仲のいい訳ではない、彼と俺。だけどなぜか、親密な関係だった。考えが似ているわけでも、話が合うわけでも、笑いのツボがあるわけでもなんでもない。だけどなぜか、親密だ。


それはきっと、珍しく、他人に抱いたこの、小さな下心のせいだろう。今だってほら、姉さんからの教えを自分のいいように解釈して、彼をラブホテルに連れ込もうとしてる。

興味本位で。


ついたのはいいけれど、これといってやることもない。どうしょうか。証明のぼんやりとした部屋のベッドの上で、二人して肩を並べて座る。


「……やっぱり、やることないよね…。」


三時間休憩で割引、と割引券には記入してあった。吹雪の方は、知らなくて一時間のつもりで来たらしいけど。


「時間があるし、やることやっちゃう?」


ピンクの、ベッドヘッドに用意されていたコンドームを一つ取ってぴら、と吹雪くんにそれを見せる。


「…したいの?」

「…何事も、経験だからね。」

「……。」


しん、と二人だけのピンクの証明の、いかにもそのための雰囲気の漂う部屋の中、静かに彼は訊ねてきた。だから、素直に言った。小さな下心の正体が顔を覗かせながら。


少しの沈黙のあと、困った顔をして吹雪くんは眉をハの字にして目を瞑った。だから俺は、従順に、小さく息を吐く唇を貪るみたいに直ぐにキスした。


「……ちゅ、……ちゅっ、んっ…はぁ、んぁっ……ひ、…んん゙〜っ!!」


ただの、バードキスはすぐに捨てて少し開いていた唇の隙間に遠慮なく、舌をねじ込んだ。

やっぱり、上手いんだね。舌は熱の奪い合いをするように俺の舌に絡みつく。絡みつく舌を吸うと、もっと奥にこいなんて、誘うみたいに引っ込めたりして。さすが、大学一の女の子の口から聞く名前だけある人だ、吹雪くんは。柔らかそうな癖毛をワックスで遊ばせた彼は、誰にでもニコニコとしていて、どこにいても人だかりがあって彼だとすぐにわかる。


キスしたまま、押し倒してそのまま彼のTシャツに手を突っ込んだ。当然のごとく、無反応な乳首をやわやわなで回したりして。男の乳首も、やっぱり勃起するんだろうか。口と口の隙間から漏れる吹雪くんの声は、これからの三時間が楽しくなりそうだと、予感させてくれるような、くぐもった、それでいて鼻にかかった声だった。


俺ね、声フェチなんだ。くぐもった声とか、堪らない。男の声に反応するかはわからないけどこの調子だと、しちゃうかも。




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