ぽすん、

倒れ込んだベッドは吹雪の体重を受け止めてぎしり、と音をたてた。その音を聞いて吹雪はびくっと身体を強張らせた。


ブラウンのシーツに吹雪の藤色の髪がちらされて暗幕カーテンの隙間からもれる光に照されてきらきらと反射する。思い出してしまって頬がほんのり桃色に色付いた。

思い出してしまったのだった、一週間前にここであったことを。ゆっくり、ゆっくりと腰を進めていくヒロト。初めての異物感に不快感ばかりが吹雪を襲って、苦しさを必死にたえようとしわをつくる勢いでシーツをきつく握りしめる吹雪をなだめようとキスの雨を顔中に降らせるヒロト。紛らわそうとしているのだろうか、まったく余裕のないキス。ヒックヒックと泣きじゃくる自分。にじむ互いの汗。すべて綺麗にさせたシーツには洗い落とされてしまっていると知っているはずなのに、なぜか鼻を押し当ててしまう。


あ、ヒロトくんのにおい。


大嫌いなヒロトの匂いが鼻いっぱいに押し寄せてきて、吹雪の体温がじんわり上がった気がした。

嫌いなはずなのに、どうして二人はあんなことをしたのか。ヒロトとは陰でかくれて喧嘩ばかりしていた。表面状では仲のいいフリをして、そうすれば画になる二人を見て誰も文句など言わなかった。性格に難がある吹雪。表面ではたくさんの人に囲まれていても、必ず内側では一人だった。だった、と言ったがそれは今でも変わりなかった。チームメイトもいい人だし、後輩だっていい子ばかりだ。だけども、吹雪は一人だ。


それに比べて、ヒロトには。確かに昔の彼はほころびだらけだった。だけど、今の彼はどうだろう。家族がいて、兄弟がいて。自分の無くしたものをすべて持ち合わせている彼。昔からいけすかないところだらけだった。


「うっ……」


ぽろ、吹雪の頬からしたたった滴がヒロトの枕にしみをつくってそこだけブラウンが濃くなった。


「…枕、ぬらしちゃった…」


ベッドサイドに置いてあるスペアーのヒロトの縁の黒い眼鏡だけがじっと吹雪の醜態を見詰めている。


じゅん、


「ん、」


重しがかかったように重くなった下半身。ゆっくり手をのばすと感じていた苦しさがそこにあった。

……勃起してる。ぼく、ヒロトくんのベッドの匂い嗅いだだけなのに、勃起しちゃってる。なんで?ヒロトくんとここでせっくすしたの思い出しちゃったから?半分混乱したままで、半ば八つ当たりで吹雪は緩く反応している自分のそこを扱きだした。


あの日、ヒロトは吹雪のペニスをなめるように見つめながら吹雪の弱いところを探るようにして、裏筋やら亀頭やら筒やらに強弱をつけて扱いていた。たまに耳に吐息を吹きかけられて目尻が熱をためて、涙をにじませていた。頭の中で、懸命にあの日のヒロトを思い浮かべて、自分の手を無理矢理にヒロトの手だと思い込ませる。


「ふぁあっ……ンぁ、はっ!ぁんっ…う、んっ!」


ヒロトくん…小さい声でつぶやくとびくんっ!背中がしなってニュチ、我慢汁が吹雪の手を濡らす。それがきっかけで扱く速さがどんどんとスピードをあげてゆく。クチュックチュ、手の中から耳を犯す恥ずかしい水音が世話しなくする。嫌いなヒロトの名前を呼ぶと、なぜだかきゅーんと胸が締め付けられる。と、同時に敏感になっていく性器。


「んっ!はっ、くぅん…ヒロトくん…あっ!うそぉっ…あ、あっ!」


ヒロトの名前を呼ぶ。なんとも単純なその行為。なのに、なぜかそれは吹雪の胸を締め付けて、下半身を重たくさせる。腰が勝手に上下に揺れる。ヒロトの名前を呼べば呼ぶほど。


「あ゙ッ!ヒロトくんっ…やぁっ……ヒロト、くんッ!や、だめぇっ…あぅっ!…ヒロトくんっ……駄目なのぉっ…ヒロトくぅんっっ……!」


ヒロトの名前をうわ言みたいにいい続けて、左手をベッドに押しつけて右手でペニスをいぢめるのに夢中になっている吹雪。だから気付きもしない。ヒロトが帰宅したことなど。


「何が駄目なの?」








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