特に、仲がいいわけでもなんでもないのに、僕とヒロトくんは親密だ。

女の子の好みも、好きな食べ物も、趣味も違う。あ、でもサッカー観戦が好きなのは一緒かな。お互いの応援してるチームが対戦した時には面白いくらいに、どっちが勝つかで言い合いをしたな。たまに誘われる草サッカーにも参加してるし。


「ねぇ、明日の午後は空いてるの?」

「あー、バイト入れちゃってる。」

「そう、それじゃ仕方ないね。一人で行くよ。」


ほら、会話だってこんなに淡々としている。


「どこに?」

「これ、」


ぴらっと、彼が僕にさし出したのは所謂ラブホテルの新装開店記念の割引券。


「え…、一人で行くの?」

「うん。」

「いや、僕誘うのもおかしいけど、一人はないでしょ。女の子誘いなよ。」

「後々めんどうだよ。」

「うーん…」


そう言われれば、そうだけども。突拍子もない人だな、とも思う。彼の事を。


「絶対行かなきゃなの?」

「……たぶん。」


なんじゃそりゃ。

行かなくったっていいって事でしょ?変だよ、ヒロトくんは。


「なんで行きたいの?」

「行きたいっていうか…姉さんが…。」


弟にラブホテルに行くことを強要する姉がこの世には、存在するのか。僕は呆れる。


「貰ったものは大切にしろって…。」

「……。」


おかしい、それは君のお姉さんが悪いんじゃない。悪いのは、君だったんだよ、ヒロトくん。生憎、僕のなかでのお姉さんのイメージは最悪になってしまっていたよ、たった今、信頼を取り戻したけれども。


黒ぶち眼鏡に大学一の優等生、吉良ヒロトくん。彼は、すらりとしたそのスタイルと、鋭い瞳のイケメンでそのスペックから彼に落ちる女の子は彼の大好きな、星の数ほどである。

しかし、そんな彼はしっかり者の仮面を被った電波系だ。ちょっと言い方が古い?流行りの言葉なんて、僕知らないんだもん。時々こうして、抜けたことをぬかす。

イケメンな顔を困り顔にしたヒロトくんに言う。


「僕、男だよ?」

「同性愛者も、ラブホテルくらい利用するさ。」

「……付き合おうか?」


大きなため息を吐いて、僕はバイトのシフトをかえてもらうべく、バイト先に申し訳ない気持ちで電話を一本いれるのだった。


「ありがとう、吹雪くん。」


電話をしている僕に、ヒロトくんは横でお礼を言った。わぁ、女の子の好きそうな笑顔。これが彼の自然体らしいから、僕は嫌味の一つも彼にくれてやれないのだった。


イケメンの笑顔に、僕は絆されるのだった。なんだ、このホモを予感させる文末は。相変わらず、隣のヒロトくんは笑顔だ。




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