ヒロトの目のまえに曝されたのは、狼など獰猛な犬科の生物を連想させるそれ。


吹雪くんの頭に、おっきな犬みたいな耳が…。


オーソドックスな猫耳、ではなく犬耳。吹雪の可愛らしい顔つきに、獰猛そうな犬の耳。その、不釣り合いな二つが一つになって、コントラストをおこしていて、吹雪の藤色の髪によく映えている。


あ、あ、あ………っ


吹雪がおさえていた手を放したことで、ヒロトのリミッターは解除されてしまった。もう、ヒロトは自重なんてしない。


「ねぇねぇ、吹雪くん。」

「なぁに?ヒロトくん。」


ヒロトの猫なで声。それを聞いて自分の首に腕をまわして子供みたいにたずねてくるヒロトに吹雪は恐ろしさも知らずに、勝手にきゅぅんとときめいていた。だから、猫なで声に答えるように、自然と吹雪のトーンも柔らかくなっていた。


「吹雪くんは耳が弱いけれど、こっちの耳はどうなのかなぁ?」


どさっ


子供のような、ヒロトが吹雪に向ける表情。それにまったく似合わぬ、大人の男の力で、吹雪は現在腰かけていたソファにぐい、と押し倒された。とたん、


がりっ


「いやぁっ…ッッ!」


頭部にちりり、とした痛みと背筋につ、と走り込んだ痺れ。吹雪のあしのつま先が空をきる。


「やっぱり、こっちも弱いんだね。あれ、違うかな?こっちの方がもっと弱いのかな?」


空を切った様子をみて、ヒロトは吹雪の上をソファに膝をたてて股がりつつ、見つめてにっこりと笑った。

それは、昆虫を採取して嬉しそうに笑う少年のような表情で吹雪は抵抗できずに、息を浅くしていくばかりだった。


「あれ、なにそれ。」


興奮して、さがっていた眼鏡をくいっと中指であげて、ヒロトは吹雪の下半身に何かを見付けたらしく、見下ろしている。


それを聞いて吹雪はみるみるうちに顔を赤くさせた。それはきっと、耳を噛まれたことで勃起してしまった自分のペニスに違いない。羞恥に腕を顔あてがって耐える吹雪、しかしいくら待ってもヒロトからのアクションはない。何事かと思い、顔をおおっていた手をはなしてヒロトに目をやると、自分に股がっていたのをやめて、ソファをあとにしようとしている。


「ヒロトくん…?」


自分は、ヒロトを飽きさせてしまったのだろうか?これからが本番といったところのはずの二人のセックス。なぜ、自分から離れたのか。さっきまでの羞恥はどこえやら、今は焦りしかなかった。


「……」


呼びかけにも返事がない。飽きさせてしまった、自分がヒロトを。久々のセックスなのだから、お互い溜まっているはずなのに。ヒロトに愛想をつかされてしまったのか。ソファに項垂れる吹雪。先ほどまでやんわりと勃起していたはずのそこもすっかり萎えてしまっていた。



だから気づかなかった。背後から近寄るそれに。


かちっ

じゃらん、


冷たい、金属。緩く首を締める太いそれ。まるで、大型犬につけられるような…………



「吹雪くん、とってもかわいい。」


ガラス張りのヒロトの部屋。ガラスに反射した自分の首もとにある重たいそれ。それを高揚とした表情で見つめるヒロト。




………首輪だった。






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