「ヒロト、なにしてるの。」


ヒロト、と幼なじみが俺のことを呼び捨てにするときは家の中か二人きりの場合だけだ。


恋人同士がよくやる類いのものではなく、ただ単にこの横暴な幼なじみが自分のイメージを守りたいがために考えだしたセコいキャラ作りだ。女の子や他人の前では俺の事をヒロトくん≠ネんて呼んで柔らかいだか、かわいいだか知らないが印象付けをしているらしい。こっちとしては気持ち悪いばかりだ。


「なにって、宿題だけど。」

「えぇー、しゅ・く・だ・いぃ?学級委員長さまえらぁい


なんだ面倒だ、なぜか知らないけれど機嫌が悪いみたいだ。


「なんで機嫌悪いの。あと、宿題してるんだから寄りかかって肩に顎置くのやめて。」

「えー?僕、機嫌悪くなんかないよぉ?」

「悪いでしょ。明らかに。」


あー、体重がどんどんかかってきて重たい。まぁ、俺より小さい分体重も軽いみたいだから平気だけど。


「悪くないもんっ。」

「あっそ。」


拗ねたな、完全に。腹に回った腕がぎゅうぎゅう締め付けてくる。まぁ、俺より体力ないから効果なんて殆どないけど。これは士郎のかまってのアピールだ。本人に自覚はないみたいだけど、昔からの癖だからよくわかる。まぁ、それでも俺は宿題を優先するけれども。


「ん、ふーっ。」

「なに。」


かぷっ


「俺、べつに耳弱くないんだけど。」


人が宿題してるのに、息吹きかけたり噛んできたり、耳が弱いのは自分だろうに。


「あーそうだった、そうだった。ヒロトは詰まんない男なんだった。」


はーっ

「で、なに?結局なんでそんなに機嫌悪いの。耳噛んでほしいの?噛んであげるからだしなよ、ほら。」


ため息をついて痺れを切らした俺は幼なじみにホールドされている腕をほどいて振替ってあげることにした。


「なにその反応、むかつく。僕だってべつに耳弱くないもん。」

「いや、弱いでしょ。」

「弱くない。」

「弱いよ。」

「弱くない!!」

「じゃ、噛んであげるよ。」


本当にめんどくさい幼なじみだ。髪からのぞく耳たぶに噛みついてやった。


「ひゃあっ!?」

「ふふ、ふふんふふん。(ほら、弱いじゃないか)」


噛みついたら声をあげた。ついでに肩もやめろと言わんばかりにあがる。くすぐったくて悶えちゃうんだから、認めればいいものを。


「かっ、噛んだまま喋るなぁっ///」




「わかったでしょ、士郎は耳弱いんだよ。」

「は?平気だったし。」


まったく、学習能力の低い幼なじみだ。おじさんとおばさんはいい大学(とこ)出てるっていうのに。なんで、こんなにこの子は頭が弱いんだ。毎年、休みあけ前日に泣きつくのはやめてほしい。新学期を徹夜あけの眠たさで迎えなければならない俺の気持ちも考えて欲しいものだよ。


「士郎、キミ本当にバカだよ。」

「バカじゃないっ」

「いや、バカだ。」

「違うっ!」

「違わない、」


ぱくっ


「はぁっ、んっ!ばっヒロトのバカぁっ…は、はみはみするのぉっ……だめぇ!」


あきれる。本当に。こうやって何回も幼なじみの耳を弄るのが俺の習慣になりかけていて正直、怖いよ。


「士郎ってほんとバカ。」


これから、拗ねてる理由も聞いてやらなきゃいけないし、本当に手のかかる幼なじみだ。結婚したら奥さんにもこうやって耳を噛んでもらいながら愚痴とかを聞いてもらうんだろうか。先の思いやられるとんだ女王様みたいな奴だ。


俺の幼なじみは。



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