幼なじみふぶきやま
女の子が出てくるよ。注意
「ヒロトくん、ここの問題おしえて?」
そう言ったのは、クラスのマドンナの女の子だった。それに対して
「あぁ、ここかい?いいよ。」
安請け合いをしたのは僕の幼なじみのヒロトだった。あーいやだいやだ。安請け合いな笑顔、へらへらしちゃってさ。
幼なじみ、家が隣。マンガなんかでよく、自分の部屋の窓を開けたら可愛い幼なじみの部屋の窓に窓同士がキスしてる勢いで繋がってるものだけれども、僕の場合は窓を開ければ憎たらしいヒロトの窓があってそこから中に侵入したらベッドに直下することになる。
マンガの世界は夢ばっかりだよ、毎朝もぅ、早く起きなきゃほっといちゃうからね!なんて可愛いセリフを吐く女の子は僕にはいない、いるのは毎朝に鼻がくっつく勢いで全く同じセリフを吐くヒロトがいるだけだ。本当に憎たらしいよ、毎朝その端正な顔を僕に見せびらかす見たいに顔が近いし、今だってこうして僕の真横でクラスのマドンナと嫌味たらしく話し込んじゃってる。
腐れ縁の幼なじみだなんてもうこりごりだ。保育園、幼稚園、小学校、中学校、そして今現在の高校。いつになってもヒロトとクラスが離れた記憶がない。そればっかりか席だってほとんど変わらない。出席番号は離れてるはずなのに!席替えの時にはいつもヒロトと話してほしいと訴えているのになぜだろう!
「ヒロトくん、じゃあ僕もう帰るね?」
「ちょっと待ってよ、一緒に帰ればいいじゃないか。」
「だってヒロトくんはまだ学級委員のお仕事あるでしょ?」
「今日はないよ、だからちょっと待って。」
「えー、」
「あの、吹雪くん、ごめんね?」
小首をかしげて謝るマドンナ。僕は女の子には紳士的なのだ。
「ううん、気にしないで。」
「ありがとう、吹雪くん。」
マドンナの頬がピンクに染まる。やっぱり、ほら、彼女は僕に気があるみたいだ。へらへらしちゃってざまぁ見ろだ。
「こんな感じかな。」
「あっほんとだ!わかりやすーい。ありがとう、ヒロトくん。」
「いやいや、学級委員として当然だよ。」
ヒロトにお礼を言うとマドンナは小走りで去っていった。後ろ姿まで可愛い女の子だ。
「何ボーっとしてるの、ほら帰るよ。」
「うるさいな、わかってるよ。」
ヒロトが僕の伸びたセーターの裾を引っ張った。それに僕は怒って返事をする。
教室には二人以外、誰もいない。廊下をすれ違う途中に挨拶を女の子たちとにこやかにかわってして校舎を出る。
「今日は、どっちがこぐの?」
「今日は、じゃなくて今日も、ヒロトくんでしょ?」
「あー、そうだったね。はいはい。」
一台の自転車で毎朝駅から通う僕ら、駅までは僕の中学の時に乗り回した自転車で、駅から学校まではヒロトの自転車だ。この自転車は藤色で、なかなかない色だからすぐにどこにあるかわかりやすい自転車だ。
「何してるの、早く乗りなよ。」
「わかってるよ。」
そう言って僕はいつもの指定席に乗り込んだ。
「ヒロト、もっと早くこいでよ。」
「うるさいな君、文句がおおいよ。」