「あっ……えと、…その、これ君のだよ、ね?」


ヒロトの胸は激しくざわついていた。あぁ、はやく家に帰りたい。吹雪くんが、吹雪くんが…俺の眼鏡さわってる。昨日いこう自分の前から姿をけしていた眼鏡。どこにおいたんだったかな、混乱しながらも本日は目に入れるのが嫌いで使っていなかったコンタクトレンズを使用しているため瞳が違和感を発して仕方ないが今のヒロトはそれどころではなかった。


「そ、それじゃっ」


動揺を隠しきれずそのままヒロトに眼鏡を握らせると、吹雪はいそいそと自分の教室へと逃げていった。そんな事とは知らずにヒロトは少し残念な気持ちになっていた。あぁ、吹雪くん、間近で見ると遠くで見るよりかわいい。あの雪みたいに白い肌に思い切りに真っ赤な跡をたくさんつけてみたい。


そう思うやいなやヒロトははっとして、すぐに自分の椅子にすわった。これはヒロトの日課であった。選択授業のたびに自分の席に座る吹雪。彼が席からたちさったあと、すかさずまだ椅子に吹雪の体温が残っているうちにヒロトは熱をにがさまいとして座るのだった。あ、今日も生暖かい…吹雪くん、子ども体温なんだろうな。


もちろん、他人が座ったあとの生暖かい椅子などヒロトは大嫌いだった。しかし、吹雪は別なのだった。惜しいことしたな、せっかく話すチャンスだったのに。

ヒロトは基本的に誰とでも話すタイプではあったが、吹雪にはそれができないでいた。なぜならば、吹雪の周りには普段から女子生徒がたむろしているからだった。それでも、話に行こうと思えば行けた、しかしうるさいのが嫌いなヒロトにはそれが出来なかった。ヒロトは自覚していた。自分もまた、吹雪と同じ女子生徒に騒がれる容姿を持っていることを。自分と吹雪の二人がならんでいる姿など見かけた日には女子生徒の騒がしいガヤがとまらないだろうと。そうなると、まともに話なんて出来ない。はぁ、本当にもったいない事をしたとヒロトはため息をはいた。


「あっ…」


ヒロトがため息をはいたと同時に机に目をおとすとそこには……吹雪くんの消しカス…。今日はなんだか様子がへんだったからかな。いつもなら、きっちり他人の席も自分の席も消しカスはひとつ残らずきっちりと捨ててしまう吹雪。だからヒロトがどんなに机の上を隅々さわっても手にいれることのできなかった吹雪の消しカス。今日はあるんだ…。どうしよう…本当にはやく家に帰りたいこんなにたくさんのオナニーのおかずたち。はやく、はやく家に帰って自分の腕のなかであんあん、いやいやと泣き喘ぐ吹雪くんを想像したい。もともと恋沙汰に興味のなかったヒロトだったがどうやら自分にはそっちの気があるらしいと知ったときにはすでに吹雪に釘ずけだった。そう、ヒロトにはそっちの気があった。




そっと消しカスをハンカチに包んで下校のチャイムをまった。





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