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恋を噛み砕く(1)

涼一と心を通わせ、変わったことはいくつもある。けれど変わらなかったことも、ある。


リビングでテレビを見る時の、小指が重なるような距離やふいに向けられる視線やCMの間に交わされるキスは変わらない。けれどその都度、不思議な高なり方をしてしまう鼓動については身に覚えがなかった。

あまり集中できないまま、番組が終わっていった。顔を上げると、壁掛けの時計が目に入った。

「あ、もうこんな時間か」
「そろそろ寝よっか」
「そうだね」

最近、僕は涼一のベッドで眠るのが習慣になっていた。今日も一緒に風呂に入り、一緒のベッドに入り込んだ。暗い部屋の中で、薄闇越しに見る涼一はいつもより精悍な表情をしている。

「洋二郎もう眠い?」
「んー……まだあんまり眠くない」
「そっか……、そっか」

涼一は何か考えるように頷いている。どうしたのかと顔を覗き込むと、キスされた。軽いキスを繰り返したあと、熱い舌が前歯をこじあけて入り込んできた。

いつの間にか、涼一はいつもと違うキスをするようになった。舌をからませ合うキスは酸素を奪い、目の奥と脳をじんわりと熱くさせる。唇の隙間から息が漏れてしまう。慣れない行為への戸惑いは、唇から漏れた瞬間大人の色に着色される。

「んっ、ん……」
「……」
「ん、……んっ!?」

涼一の仕方を真似るように、必死になって舌を動かしていた。だから気付かなかった。いつの間にか涼一の掌が滑り出し、布団の中で蠢きはじめていたのだ。涼一の右手は、ジャージの上から僕の股間を撫でていた。

「ちょ、りょ、涼一!?」
「……ん……?」
「な、なにやってるの!」

涼一の手首を掴んだ。涼一の目も、舌も、優しい。それなのに手首は僕の抵抗を許さなかった。そこに留まったままでいた。

「ちょ……涼一!」
「やだ?」
「え……?」
「こういうことされたら、気持ち悪い?」

涼一の目は優しく僕を突き破る。その間、右手はジャージの上から、中心にやんわりと触れ続けていた。

「え、いや……え……」
「ごめん……洋二郎にキス出来るだけでも、一緒に眠れるだけでも満足だったはずなんだけどな」
「……」
「一緒にいると触りたくなるんだよ、変かな」

学校にも家庭にも馴染めない僕の常識は、涼一の一存に由来している。変かと聞かれても、僕は答えられない。涼一が不安そうにしていると僕も不安になる。けれど不安げに俯く涼一は、かわいい。





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