Finding for you | ナノ
「スズメー? いるー?」
俺はいつものように、相方の名を呼ぶ。すぐに返事やら何かしら反応がするはずだがやけに静かに見えた。
「スズメー?」
もう一度、名前を呼ぶ。ヤグルマの森は広いし、ましてや森に隠された木はすぐに見つからないものだ。
しかし、俺はスズメと遊びたいわけで。善は急げというわけで、俺は首と体を動かしながらスズメを探し始めた。
木々の合間を縫いながら、草原を掻き分けながら。さらには池を覗き込みながら探したが不思議なくらい見つからない。
時間だけがいやな程に過ぎていく、時計は持ってないけれど太陽の動きで分かる。
「迷子……とかじゃないよな、俺よりここに詳しいし! ん、ここ何処だ?」
どうやら、迷子になったのは俺のようで。スズメは見つからないわけで。時計もコンパスもないから方角すら不明で、木々の深さに太陽が隠されてしまって。
「……どうしよう」
サアアッ、耳に届くほどの血の気が引く音。ガサガサと草むらが揺れ動く戦慄。叫びたくなる衝動に俺は身をすくめた。
「ッ伏せて!!」
突然木々を揺らして聞こえた声に俺の体は従った。刹那、草は俺だけを避けて裂けに裂けた。もし立ったままでいたら俺の体も文字通り木っ端微塵だったのかもしれない。
「大丈夫? ここは虫たちがよく出るから――って、トローチじゃん」
俺は声の主が俺の名を呼んだことに驚愕し顔を上げた。まさかそちらからお出ましとは!
「スズメェッ!」
スズメはあんぐりと口と目を開く。そりゃそうだ、抱き付いてるんだもの。
「トローチ、あたしを探しにきてくれたの?」
相方の問いに俺は頷いた。それこそ首がもげ取れそうな位。耳元で微かに聞こえた五文字の感謝を示す言葉に俺の心身は真っ赤に染まりやがった。
Finding for you
(「ありがとう」をこのタイミングで言うなんて!)