暗闇できみとふたり | ナノ

「花火、やろうよ」
 破顔一笑して提案した陽虹の言葉を一蹴するように青藍は紫煙と共に溜め息を吐いた。

「花火嫌いだったっけ?」
「陽虹相手は嫌やねん」
「そんな言い方ないんじゃない?」
 口を尖らせて抗議する陽虹を一瞥して青藍は立ち上がる。付き合ってられない、時間の無駄でしかないと捨て台詞を残して。
「そんな言い方ないんじゃない?」
 陽虹はまた同じ台詞を繰り返す。しかし、声色は謝罪を秘めているようだった。ごめんね、青藍が喜ぶと思ったんだけどなと双眸が潤む。
 なにも泣きそうにならなくたっていいじゃあないか、おい。

「なあ、線香花火……あるか」
「あるけど……やらないんじゃあ」
「気が変わってん、一回だけやぞ」
 待ってましたとばかり陽虹の表情がみるみる明るくなる。前の泣き顔どこへやら。
 嗚呼、そのどうしようもない底抜けな明るさよ。

「勝負しようよ、どこまで長く玉を保てるか」
「勝負と聞いたからにゃ陽虹には負けへん」
「負けたらアイスおごりね!」
「上等や」

 斯くして、静かなる戦いの火蓋は切って落とされた。
 暗闇に染まる庭先で輝く二つの黄昏色の焔のゆくえは彼らと神のみぞ知る――。


Alone with you in the dark

(闇に紛れたはどちらの焔)


(ミウさま宅陽虹さん+青藍さんお借りしました)
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