むかし、むかしのお話でございます。
その昔、数多の争いを繰り広げる大陸があった。その年月は五百年にわたり興亡を繰り返した国は十を超え後の世に「五代十国」と呼ばれる時代を勝ち残った国は当代の皇帝によって大陸全域にわたる巨大にして強大な国家となった。
しかし、盛者必衰の理は例外なく国を追い詰めていった。皇帝の血筋はたったの一代で絶たれ、争いを好まぬ二代目は近臣の謀略により暗殺、以降は歳若い幼帝が玉座に座るだけで実権は貪欲なる悪官らによるものとなってしまった。
貧富の差は激しくなり、民衆は困窮に咽び泣くばかりであった。
八代目の皇帝の時代にある男が立ち上がった。彼は貴族でも将軍でもなく、ましてや王でもないどこにでもいる武人だった。彼は古今東西の勇士を集め、湖の滸(ほとり)の古城を根城に王朝へ反旗を翻した。
男の集めた勇士は一〇八人、対する王朝は数十万であった。しかし、一〇八の勇士は誰もが一騎当千の猛者揃い。堪りかねた皇帝はある導師を遣わせる。導師曰く「其の方珠に化して数珠せしむ」。即ち、豪傑を魂もろとも数珠に封印してしまおうというものであった。
そして、導師は豪傑たちを数珠に封印させ湖の奥底に沈めてしまったという。その数珠の玉各々には天に三十六、地に七十二の星の名が刻まれている。
だが、話はそこで終わらなかった。封印した導師を黒とするならば、白の導師が一〇八星を地上に解放したのだ。
白の導師は勇士らに伝えた。
「唯一なる星の訪れと共に、一〇八の星は煌く。其処に栄えしは暁光の白よ」
一〇八星が復活したことは微塵も知らぬ皇帝と黒の導師は恐れおののいたが、時は遅かった。見事皇帝と導師を倒した、かの武人は不屈の勇者として語り継がれ国に暁光がもたらされた。
なんて、そんな簡単に世界が動くわけねーだろ。バーカ。
そんな黴臭い昔話から百年も二百年も経った後の物語。
はじまり、はじまり。