Cadeau de moi a toi! *12/25 00:00


若サンタが組のみんなにプレゼントを配るだけのかんたんなおはなし
ほぼ会話文






両手に抱えきれない、色とりどりに包装された箱をトランクに詰めて僕は部屋を出た。
店が始まるまえに、全員に会えるといいなと幽かな希望と期待を抱いて。


「エリアーデ、ちょっといい?」
「若様、ごきげんよう。なにか入り用でしょうか?」
「ううん、仕事はないよ。ちょっと早いけど、『Joyeux Noel!』」
「え、え……えと、これ、は」
「エリアーデ、真っ赤だよ?」
「っ見苦しい所を、すみません……」
「謝らないでよ、可愛いんだからさ」
「えっ、それってどういうっ!」
「文字通りの意味さ。じゃあ、今日も仕事頑張ってね」

白百合の箱には白いリボンのバレッタを。

「あれ、ファルス。サンテラは一緒じゃないの?」
「常にくっつかれたら、うざったくて適わぬぞな」
「今頃あなたのこと探してたりして」
「……過保護で過干渉とは此の事ぞな」
「仮定のはなしさ。二人揃ったときに渡そうと思ったけど、『Joyeux Noel!』」
「やけに小さな箱ぞな」
「開けてからのお楽しみさ」
「……サンテラのは?」
「ちゃんとあるよ。ほら、このシクラメンの箱」
「中身は?」
「それは言わない」
「何故ぞな」
「サンテラに会って渡すから」
「吾がかわりにやるぞ」
「ファルスがかい?」
「若様の貴重な時間を奴のために割くのは惜しく思えるぞな。悪いのは奴ゆえ」
「ふふ、じゃあお願いします」

紫陽花の箱には竜を模した懐中時計。
シクラメンの箱には雪結晶のブローチ。

「マリオン、アルル。限定品の試作はどう?」
「あぁ、若。どうもこうも、まだ迷走しとります」
「どれも美味いと思うで?」
「例えば?」
「スペアリブ、骨付きなんやけどシチューみたいな感覚で食えるで」
「じゃあそれで」
「安直やな」
「そうそう、二人にささやかな応援も兼ねて……『Joyeux Noel!』」
「ええんですか、うちら部下なのに」
「そんなことを祝日に引き出しちゃいけないよ」
「マリ、貰えんもんは貰うてのも礼儀やで」
「せやけどな……」
「もしかして、アルルからのが嬉しかった?」
「っそんな、そんなことは……」
「マリの気持ちはよう分かった……結婚しよか」
「阿呆が……」

山吹の箱には一対のワイングラス。
藤の箱には一対のマグカップ。


「ランス、部屋にいたの?」
「ノックしやがれ誰だよ! って若様でしたか……吃驚させやがって」
「ふふふ、驚いた? おわびも兼ねて『Joyeux Noel!』」
「メリークリスマス、ですか」
「ところでそんなに勉強して、司書にでもなるつもり?」
「いえ……司書では、なくて……」
「ふうん……。あ、よく見たら小説書いてたの! ね、見せて見せて!」
「嫌ですぜったい嫌ですっ!」
「いいじゃないいずれ知れ渡ることだよー? もーらいっ」
「ただの趣味です暇つぶしですからさっさと返して!!」
「あー……あなた真面目な顔してラブコメディ書くんだ。素敵な趣味をありがとう」
「皮肉か嫌味にしか聞こえませんが」
「きのせいだよ」

ヒヤシンスの箱には、青インクの万年筆を。


「ねえ、バラン」
「ん、なんだ?」
「今日が何の日か知ってる?」
「世界で一番可愛いお姫様の誕生日?」
「ばか、そんなんじゃないよ」
「分かってるって。クリスマスだろ?」
「そう、だから……」
「「Joyeux Noel!」」
「だぶっちまったな」
「まさかバランが用意してたとはね」
「楽しみだったからな」
「ふふ、開けていい?」
「じゃあ俺も」
「……おんなじだね」
「テレパシーみてぇ」
「テレパシー?」
「あー……、要するにおんなじこと考えるってこと」
「だったらいつもそうじゃない」
「そうだな」
「ねえ、バラン」
「なあに、ジルダ」
「だいすき」
「……反則」

薔薇の箱には、陶器の赤いオルゴールを。

明日の朝、目を覚ましたら
枕元にお返しのプレゼントが積まれていた。
きっと僕は、幸せなんだろうな。
みんな、ありがとう。





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