生前エミッタ *12/19 09:31

或る姫君の回顧録







むかしむかしあるところに
ぜったいに靴を履かないお姫さまがおりました

「だって、わたし、お外に出られないんですもの」

お姫さまは窓から出入りする小鳥をみては、翼がほしいと思い
お城を横切る馬車をみては、その脚が羨ましいと思いました

「だって、わたし、飛べないし走れないんですもの」

もしも神さまがいたならば、お姫さまはこう願います

「一度だけでいい、歩いて、走って、城の外に出てみたい!」

――Dann ist hier zu machen, dass ich!
(ならば、私が叶えてさしあげよう)


お姫さまは、思いのままに動かせる新しいからだを手に入れましたが
それは「お姫さま」の死を意味するものでした


「Gute Nacht, Mein Korper」
(おやすみなさい、生前のわたし)




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