色-賜-SS
こうすれば寒くない 5/6

その関係でこちらにも少し出回るようになったのだ。


「頭痛がする時に酒…か」

「迎え酒じゃありませんしそもそもあなたが酔うほど入れてませんよ。体を温める程度に、です」


ぽんぽんと李句に後ろからせっつかれながら歩く。
こんなところを人に見られたら何と言われるか。






己の言葉通り、再び部屋を訪れた李句から子細を聞き、私も安心して眠れるようになった。
明日出られれば何とか間に合う状態だな。
李句含め、私は随分と部下には恵まれている。


「今日は迷惑をかけた」

「そうお思いでしたらその…厚かましいのですが、ひとつお願いが…」

「何だ」


すでにうつらうつらと船をこいでいる。
それだけ聞いたら、早めに部屋に戻るよう言ったほうがいいだろう。


「今日…もう、ここで、眠らせてください…」

「何?」


よほど限界なのか、了承も得ぬまま李句はするすると布団に入りこんできた。
朝から散々感染するから近寄るなと繰り返してきたのがいかに無意味か、いまさら思い知らされたようだ。

…なにより温かい。
火鉢など不要なくらいに。


「全く。…完治したら後悔させてしまいそうだな」


さすがに病み上がりの身では欲情する元気はない。
官兵衛は灯りを消し、布団の中の熱源を緩く抱きよせながら冬の静寂に包まれ、眠りについた。


end.
→翌日とあとがき

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