色-賜-SS![]() ![]() ![]() ただ、その発想には閉口した。 …と、口にしかけたのだが真横でへこんでいる李句の姿が目に入ったので止めた。 「あの…無理して食べなくとも」 「お前は魚料理なら必ずまともに作れるのか」 「は、はい。他も…今回のようなことは稀で」 「なら夕食には魚の白身をほぐして粥に入れてくれ」 暗に夕食も李句に任せる、と告げた。 先ほどまでしおれていた李句が安堵したような笑みを見せる。 夜までには味が分かる程度に快復できていればいい。 時折失敗しても彼女は、すぐにそれを忘れさせるほどの成果を出すだろうから。 何より…だんだん李句の扱い方が分かってきた。 「骨でダシを取れば無駄もなくなりますね」 「砕いて肥料にしても良いだろう」 手間はかかるが経済的だ。 生ごみを極力出さない黒田家のやり方にも即している。 「…今度、魚以外でも汚名返上させて下さい」 「暇があればな」 なかなか機会は訪れないだろうが、楽しみにさせてもらうとしよう。 秀吉様の城でいただく豪勢な食事より、李句の手料理のほうがずっと美味いのだから。 夕食後、額を合わせて熱を確認。 「あ、下がってる!」 鼻の頭が触れあうほど近い距離で、李句がはしゃぐように言う。 そんなに近づけばうつるだろう、と喋りたいのだが顔が近すぎて迂闊に口を開けられない。 「良かった。食器下げるついでに皆さんにもお知らせしますね」 「あまり騒いでくれるな」 離れたおかげでやっと口を開ける。 李句の手が離れた瞬間、肌寒いと感じたのは気のせいだと思いたい。 さて、せめて今日どれだけ仕事が片付いたか見ておかねば。 前へ ![]() |