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わたしの席は、真ん中よりちょっと後ろで窓側寄り。たいして悪い席じゃないけど、いい席ってわけでもない。
先生から丸見えじゃないけど見えないわけでもない、日の光が届きそうで届かないことのほうが多い、そんな席。

でもひとつだけ、この席でよかったと思うことがある。

あの人のことがよく見えること。わたしの左ななめ前、窓際のあの人。






「なに、まむちゃん。好きなヤツできたの?」

「違う違う、好きとかそんなんじゃないの!ただ気になるっていうか、目に付くっていうか…」

「ククッ、そりゃ恋だな」

1月で気温は当然低いけど、風がないから日なたは結構暖かい。わたしが作ってきたサンドイッチにアリンコのように寄ってきた琥一くんと琉夏くんと、屋上でお昼を食べていた。
給水等の壁も陽を浴びてほんのり温かい。そこに寄りかかってサンドイッチをぱくつく琥一君をじろりと睨むと、おかしそうに笑われた。

「からかわないでよー。もう。サンドイッチ返しやがれ」

「誰の真似だ?コラ」

「そうだぞコウ。からかうなんて失礼だ。…まむちゃん、このハムサンドも貰っていい?」

琉夏くんの方を見るとすでにハムサンドは半分口の中に入っていて、思わず笑ってしまった。

「いいよ、2人にあげようと思って余分に作ってるから」

「さふが。いたらきまふ」

「もう食ってんじゃねえか」

「琥一君もね」

琥一君の手にはもうツナサンドが握られている。にやりと笑うと、三角のそれはあっさり口の中に消えてしまった。

「そいつってあれでしょ?校門前でよくチラシ配ってる」

ぺろり、と指を舐めながら琉夏くんが言う。

「んあ?・・・ああ、そういや居たな、そんなのが」

「そう。柔道同好会なんだって」

「同好会?部じゃねえのかよ?」

「まだ部員がいないんだよ。だから同好会」

「部員いないの?一人も?」

「うん」





そう。部員がいない。

だからあの人は、一人で頑張っている。

不二山嵐くんは。


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