60-1 [ 20/40 ]

「あああああああ!!!!」

良く晴れた空に響き渡る叫び声に、任務から帰ったばかりのジャブラがため息を吐いた。
またコーヒーをこぼしたか、大事な書類でも汚したか。
心の底からどうでも良いことだが、放って置くと後から「長官の俺のピンチになぜ駆けつけねえ!」と理不尽に怒られかねないので、しぶしぶ自室を出て長官室に向かう。

がしゃんっ
ばさばさっ

「やべえ忘れてたあああ!むこうに着くのが検閲やらなんやらで一週間として…今日の内に決めればなんとか……っ!!」

どたんばたんと彼のデスクをひっかきまわす姿に、ついさっき吐いたばかりのため息をもう一度。
何かを探しているようだが、デスクから引きずり出したものをポイポイと投げ出すものだから、長官室は給仕長が見たら雷を落としかねない散らかり様。
ホントいっぺんカリファかハルアに叱ってもらいてえ…と頭をかいて、特に非常事態という訳でもなさそうなので、自室に帰ろうと踵を返した。

「あったあああああ!おいジャブラ!てめえもちょっとこっち来い!」

「……げ」

ただし逃亡が一足遅かったようで、何かを見つけ出して頭上に掲げるスパンダムにしっかり捕まった。
命令されれば逆らえないので、仕方なく散らかった物を避けることなく踏み付けて傍に寄る。
ばん!とデスクに置かれた探し物は、無機質な長官室に似合わないような賑やかな色彩だった。

「なんだこれ…子供向けのギフトカタログだあ?」

「おうよ、お前も手伝え。な」

いや、な、じゃなくて。

「そんなもん出してくるってことはハルア絡みだろ?何か送るのは良いが、そんなに大騒ぎしなくても良いだ狼牙…」

「バカか!今日の内に決めちまわねえと一週間後に間に合わねえんだって!」

「……間に合わねえって、何に」

「ああ!?お前まさか知ら……」

…にやあ

いきなり人を馬鹿にするような笑みを浮かべたスパンダムは、「そうかそうか〜」と楽しげにカタログのページをめくる。
ぺらぺらとめくられるカタログは、どのページにも玩具から衣類、家具に文具に書物などが綺麗に載せられている。

「何だよ、俺が何を知らねえんだよ長官」

「いやあ〜?別に知らねえなら良いんじゃねえか?そうか〜、てめえは知らなかったのかあ〜そうか〜」

「……長官」

「あ、もう良いぞジャブラ。俺はこれから忙しいからな〜?」

ぷっちん
あ、これはキれてもしゃーねえわ。これは長官が悪いわ。
そう言い聞かせて、さあレッツ人獣化。

「ん…?ってなんで能力使ってんだてめえはあああ!!」

「なあ長官、一週間後に何があるんだ?」

「べ、別に何でも…」

「あんたがそこまで必死になって更に子供向けギフトカタログなんだからハルア絡みってことは分かってんだよおおお」

「ぎゃああああ教える!教えるからハルアからの手紙盗るなああああ!!」


+++++++


「わんっ」

「わ、こんにちはわんこさん」

時を同じくしてW7。
ガレーラに昼食を届け、自分もブルーノと共に昼食を終えたハルアは散歩中。
入り組んだ路地を進みながら、すれ違う人や動物に挨拶は欠かさない。
そうして進むうちに、初めて来る小さな公園を発見した。

「やっぱりまだまだ知らない場所が多いですねえ…。侮りがたしW7です」

むん、と意気込むハルアに、公園で遊んでいた子供たちが不思議そうに視線を送る。
しかしたいして興味も無いのか、また遊具に視線を戻して騒ぎ始めた。
その騒ぎをそっと通り抜けて、奥にあったベンチに腰掛けようとすると、ふっとハルアの傍に影がさす。

「?雲でも出てきましたか…?」

「あ、やまかぜ」

「え」


[*prev] [next#]
top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -