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待っていてくださいねルッチさん!
今行きますよ、あ

「……!!」

「おーいまたハルアが転んだぞー!」

「もう誰か背負ってやれよお!見てらんねえって!」

ぼくの姿のままフランキーさんにさらわれてしまったルッチさんをお助けすべく、ガレーラの皆さんとフランキーハウスに移動中なのです!
いつもよりずっと高い視線にも慣れて来たので、皆さんに遅れないようにと走っていたんですが…。

…ルッチさんの足の長さが憎いです…!!

一歩踏み出すだけで予想以上に前に進んでしまうので、走りにくいったらありません!
そのせいで足を絡ませてしまい、もう今で3回も地面と仲良しさんになりました。
転んでも、さすがルッチさんの体。
いつもの姿でこれだけ盛大に転ぶと、足や腕をすりむいて流血間違いなしですが(しかもアザのおまけつきで)、今なら軽く赤くなる程度。
それもすぐに引いてしまうので、改めて体の造りの違いを実感です。

「ハルア大丈夫か?その身体じゃあまだ動きづらいじゃろう」

「……!(ぶんぶん)」

「そうか?無理はせんようにな」

「!!(こくこく)」

「…やべー、ルッチがすげえ純粋だ…」

「お菓子あげたくなるよな、あれ」

少し汚れてしまったタンクトップをカクさんに掃っていただき、さあ仕切り直しですよ!
ぼくは腹話術は使えないので声は出さないように気を付けていますが、なにやら他の船大工の方々がとても複雑そうな顔でこちらを見るんですよね。
そうですよね…。いつもは冷静で仕事も出来るルッチさんが、さっきから何度も転んでいる姿なんて見たら、やっぱり複雑ですよね…。
ごめんなさいルッチさん、もしかしたらぼくはあなたの評価を下げてしまっているかもしれません…。

「うわあああしゅんとしてるうううう」

「くそう頭撫でたい!シルクハットごとぐりぐりしたい!」

「ンマー…お前ら楽しそうだな…」

「セクハラですね。ですが今は先を急ぎましょう」

「そうだった!あの変態野郎に何されてるか分かったもんじゃねえ。ハルア!」

「!!」

ひゃああああ!
パウリーさんに名前を呼ばれて振り向けば、ぐるんと回る視界。
お腹に感じる肩の固い感触と、背中に回っている腕。

これは、た、俵担ぎ…!?

「パウリー!おぬしもっと抱え方があるじゃろう…!」

「うっせ!どうしてもルッチの体を横抱えとかおんぶとか想像したくねえんだよ!」

「説得力がありすぎる!たしかにきつい!」

…すいませんルッチさん、なんだか色々と言われています。
出来ればぼくも自分の足(ルッチさんのですけどね)で走りたいんですが、3回も転んだ身としては反論の余地がありません。
一刻も早く目的地に着くためにも、この状態が最善策のようですしね。

すいません、お願いします、とお礼と感謝を表すつもりで俵担ぎされたまま小さく頭を下げると、くしゃりと笑って気にすんな!と返してくださったパウリーさん。
鍛えらあげられた成人男性の体が軽いはずも無いのですが、そんな様子も見せずに颯爽と走る姿は、さすがこの街の船大工さんの1人と言ったところなのでしょうか。

「ルッチもハルアの体なら無茶はせんと思うんじゃが…」

「まあな。だが絡まれたり触られたりすればおそらく…」

「…うわあ…」

カクさんとブルーノさんのやり取りに、裏町を走り抜ける皆さんの表情はますます苦々しげに。
ああルッチさん!ただでさえ慣れないちんちくりんの体でしょうに、きっと怖い思いをしていらっしゃいますよね!
フランキーさんは良くも悪くもこちらの話を聞かない方なので、おそらくはぼくと中身が入れ替わっているという事実も聞き入れてもらえていないことでしょう。

「よしお前らー!ルッチがハルアの体のままでブチ切れる前に乗り込むぞー!!」

「ぶっちゃけ俺らが行かなくても朝には帰って来そうだけど行くぞー!!」

「ただしその時は拳は血まみれだろうけどな!!」

「真剣にシャレにならん!!」

「甥っ子に前科を付けてたまるか…!」

なにやら皆さんの士気が上がったところで、夜の闇の中でも賑やかさを失わない独特の建物が視界に入りました。
ルッチさん!今参りますからね!!

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