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その時、門の辺りが騒がしくなった。
皆がそちらに視線を流すと、モクモクと視界を遮るかのように立ち込めた煙の中、真っ直ぐにコチラに向かってくる影が見えてカク達は身構える。
カリファはアイスバーグと***、それから○○○と共に近くの物影に避難した。
立ち込めていた煙が晴れると、そこには真っ赤に燃え上がる赤い髪と、同じく燃えるような赤く鋭い瞳がカク達に向けられていた。
その男の数歩後ろに静かに控える金髪で仮面を着けた男。
何処かで見た顔だ。
ルッチの頭の中で高速で手配書がめくられ、目当ての手配書を見つけ、思わず眉を寄せた。
「ユースタス“キャプテン”・キッドと、殺戮武人が一体なんの用だっポー。」
「船の修理を頼みに来たんなら、ずいぶん行儀が悪いのぅ。」
「生憎うちには専属の船大工がいるんでな。修理は間に合ってる。」
「じゃあ何しに来たんだよ!」
「犬を一匹引き取りに来た。」
「犬?」
『キッド!』
***やアイスバーグと共に物影に隠れていた○○○が元気良く飛び出してきた。
そういえば○○○の探している保護者…否、飼い主の名前もキッドだったな。
まさか大型ルーキーの一人だとは思わなかったが。
呆気に取られるカク達を無視してキッドに走り寄っていく○○○は、盛大にこけた。
慌てて助けようとしたのだが、キッドの能力で軽い身体がキッドの元へと飛んでいく。
気付いた時には片足を捕まれ、逆さ吊り状態の○○○と目があっていた。
『キッド…頭に血がのぼるぅ!』
「やかましい!何度逸れたら学習するんだテメェは!」
『だ、だって…キッド…。』
「俺は先に宿に行ってろっつっただろうが!この耳は飾りか!?」
『い、いたいいたい!耳引っ張らないで!ごめんなさいぃ!』
「おい!ルーキーだかキューピーだか知らねェが、子供に乱暴な事してんじゃねェぞ!」
「うるせェ!コイツは俺のペットだ。どうしようと俺の勝手だろ。」
『血が…血がのぼるぅ…。』
『○○○さん!?』
「ンマー、そろそろ離してやったらどうだ?○○○の顔が茹蛸を通り越して紫になってきてるぞ。」
「ちっ。」
アイスバーグの進言で、ようやく逆さ吊り状態から○○○を解放したキッド。
まぁ、掴んでいた手を離しただけなので、○○○は頭から地面に落ちたのだが。
余りにも良い音がしたのでパウリーは顔を歪める。
落ちたまま微動だにしない○○○から啜り泣く声が聞こえて***はオロオロと慌て、カリファも形の良い眉を寄せた。
「キッド。○○○を手荒く扱うのは止せと言っているだろう。いくら人前が恥ずかしいからといって、そんな乱暴にしたら○○○が可哀相だ。」
「余計な事いうなキラー!」
「全く、お前のツンデレ具合にはほとほと呆れる。」
「キラー!!」
「だいたい、○○○が宿に来なかったのは宿の名前も場所も教えなかったお前が悪いのだろう。それを○○○のせいにするとは…俺様も大概にしろ。お前はもうちょっと…」
「説教は宿に帰ってからにしろ!」
『だ、大丈夫ですかアークさん!』
『…うん。大丈夫。オレが悪いんだもん…。』
「あ?なんだテメェは?」
『え!?ぼ、僕は…その…。』
『友達の***だよ!』
「友達だァ?」
「黙っていろキッド。そうか、○○○の友達か。俺はキラーと言う。○○○と仲良くしてくれてありがとう。だが、そろそろ帰らなければならない。」
『そう…ですか。寂しいですけど、仕方ないです。○○○さん、また会えたら一緒に遊びましょうね!』
『うん、約束!』
***と○○○の小さな小指で繋がった約束。
キラーに論破され、押し黙っていたキッドはガリガリと乱暴に頭を掻いて、離れ難そうな○○○の首根っこを引っつかんで持ち上げる。
苦しそうな悲鳴が上がったがキッドはそれを無視し、***の頭を軽く撫でてから出口に向かってスタスタと歩き出す。
ブランとぶら下がったままコチラに手を振る○○○に手を振り返していると、キラーと呼ばれた仮面の男が軽く頭を下げた。
「ウチの子が迷惑をかけたようで申し訳ない。」
「いやいや、ワシは楽しかったぞ!***も喜んどったしな!」
『はい!また会いたいです!』
「そうか…○○○も喜ぶ。そうだ、○○○の電伝虫の番号を教えておこう。」
『わぁ!ありがとうございます!』
「おい、キラー!何してんだ!早く来い!」
「では、俺も行く。」
『はい、さようなら!』
キラーから貰った○○○の連絡先を大事に手に握りしめニコッと笑いながらお別れを言うと、キラーが***の頭を優しく撫でた。
グローブが当たって少し痛いが、***は嬉しそうに笑う。
まるで嵐のように去って行くキッド海賊団を見送りながら、ルッチ・カク・カリファはキッド海賊団が捕まったら○○○だけは保護して、***と共にエニエス・ロビーで給仕をさせようと心に誓った。
水の都に嵐襲来!『えへへ。』
「よかったわね、***。これでいつでも○○○君とお話出来るわよ。」
『はい!とっても嬉しいです!』
「***…。」
『はい?』
「俺と○○○…どっちが好きなんだっポー。」
『えぇ!?』
「ルッチ、それはセクハラじゃぞ。」
「そうね、セクハラだわ。」
「!?」
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