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「山風の兄ちゃんお菓子―!」
「鳩の兄ちゃんお菓子ー!」
「パウリーお菓子ー!!」

「おい待てなんで俺だけ本名呼び捨てなんだコラ」

「もうおぬしら『Trick or treat』使う気ないじゃろ…」

「クルッポー!用意してあるから引っ張るなっポー!」

W7が街中でハロウィンを楽しむのだから、それにガレーラカンパニーが黙っている訳が無く。
なんせ、あのアイスバーグである。
この日だけは休憩時間に限り、各ドックの門を開いて子供たちを招き入れることにしている。
船大工は子供たちの憧れということもあり、それぞれがお気に入りの職人にお菓子をねだりに行くことができるのだ。

もちろんパウリー・カク・ルッチの3人もその例にもれず、がっちりと子供たちに捕まって催促に会っている。
適当に飴や焼き菓子を放ってやりながらも、小さな悪魔や吸血鬼たちの群れに、見慣れた姿がなかなか見つからないことに首を傾げていた。

「やっぱあいつも今日は仮装してんだろうなあ」

「いやあどうじゃろう、いつも通りの姿で普通に来てもおかしくない気がするんじゃがな」

「…ハルアならそれもあり得る気がするが、どうせあの過保護の伯父が黙っていないっポー」

まさにルッチの言う通りだったりするが、やはり1番ドックの門をくぐる子供たちの中にハルアに姿は見付からない。
まさか他の奴らの所に先に行っているんじゃないかと3人でこっそりヒヤヒヤしつつ、お菓子お菓子と騒がしい子供たちの相手をこなす。
もう『Trick or treat』は面倒臭くなったようで、「はい!」の一言で手を差し出す子供がほとんどになっていた。
そんな中で、ひょっこりとのぞいたのは真っ黒なフード。

「こんにちは、お待たせしました!」

「はいはいおぬしも飴で…ってハルアじゃったか!!」

「お、やっと来たか!他の奴らの波に押されてたんだろどうせ」

「そうなんです、皆さんパワフルに走り回っているもので、なかなかたどり着けませんでした」

「クルッポー!それは…赤ずきん…と言うより黒ずきんか?」

「はい!ブルーノさんの力作なんです」

ハルアをなかなか見付けられなかったのは、すっぽりとかぶったフードのせいだったらしい。
赤ずきんのイメージをハロウィン仕様でダークなものに変えた衣装は、完全に保護者スイッチの入ったブルーノが一晩で作ったもので、「うちの子一番」精神をふんだんに盛り込んでいるとかいないとか。
まあそれだけの力作な訳で、丁寧に縫われた衣装は、たしかに他の子供たちの仮装衣装の中でも見劣りどころか秀でて見える。

ちなみに、赤ずきんがモチーフであってももちろんスカートではない訳で、それに対してこっそり舌打ちをしたのはさて何人?

「あ、お弁当が遅くなってしまってすいませんでした!」

「子供たちもそろそろはけて来た頃じゃし、今の内に食べておかんとな」

「あーくそ、あいつら結構手加減なしにつっこんで来やがるから、変に疲れるんだよな」

「ハルア、俺の隣が開いてるっポー」

少しだけ遅くなった昼食の輪の中で、ハルアを除いた3人が考えていたことは。

(((………いつ『Trick or treat』って言われるんだ……?)))

「今日はお弁当もハロウィン仕様なんですよ!」

他の子供たちのものとは別に用意したお菓子の袋を、3人それぞれがこっそりと隠し持っていたりするが、そんなことも知らずに昼食をひろげるハルアのつけたカボチャ型のブローチが、そわそわする3人をあざ笑うように光っていた。


君の勝ちだねジャック・オ・ランタン



あとがき
ハッピーハロウィーン!
ハロウィンらしいことはまだ仮装しかしていませんが、『Trick or treat』はまた次で(笑)
管理人:銘



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