その18-2 [ 34/50 ]

「W7に戻ります。ルフィさんたちに会わないと」

「ハルア、お前はもう麦わらの一味じゃあない」

「…そろそろ離してあげてちょうだい。
その子に手を上げた時点で、私との約束を反故にしたと判断するわよ」

右腕を掴まれたまま持ち上げられ、足が浮いてぶらんと宙に揺れています。
体重が掴まれた右腕にかかって、そろそろ声が我慢できそうになくなった頃に、ロビンさんが助け舟を出してくれました。
無言でその場に下ろされ右腕を解放されると、今度はその赤くなった右腕を撫でるルッチさん。

…やっぱり、この人はぼくに優しすぎる。
ぼくを一般人として保護するにしても、青雉ことクザンさんの命令があったにしろ。
ぼくに触れるその手が、向けられる目が、こちらが気恥ずかしくなってくる程に甘くて熱いんです。W7で初めてお会いした瞬間から、ずっと。

これではまるで、まるで、好かれているかのような。

政府の、お役人さんに?(しかもなにやらもの凄いお方のようです)
海賊船に乗っていた、ただの子供が?……海賊船に乗っていたなら、ただの子供ではないんでしょうけど…。
闘いについても海についても無知で、家事しかできない、ぼくが?

「…あなた達と言い青雉と良い、政府はこの子に何を求めているの。保護だなんて言って元海賊の子供を捕えて、何をしようと言うの!?」

そうですロビンさん、まさにその通りなんです!
ルフィさんたちのように能力がある訳でもなく、少しだけお話を聞いた「古代兵器」について知っている訳でもなく。何をどう考えてみても、自分に価値が見出せないのに。

「ニコ・ロビン、それを聞いて何になる?」

「…あなた達が、私との約束を破っていないと確信したいだけよ」

「そ、そもそもその“約束”は何なんですか?W7で、何があったんですか?」

W7で、サンジさんとチョッパーさんにいきなり別れを告げて消えたロビンさん。
更に、その後アイスバーグさんの暗殺騒ぎに加担しているという物騒な記事。
そんな彼女に会うために、ルフィさんたちは本社へ、ぼくは宿で待機。

何も知らない。何も分からない。
ロビンさんに何があったのかも、ルフィさんたちがどうなったのかも、自分自身の今の状況でさえ。

「ハルア、心配せずに大人しく…」

「ぼくは、海賊なんです。クザンさんとは知り合いではありますが、政府に役立つことなんて何もできないのに、こんなの…っ」

とすん。

軽い音に顔をあげると、ルッチさんが座席の一つに腰かけて、何やら思案しているご様子。
足を組んで顎に手をやる仕草があまりにも様になっていて、どうしていいか分からずにロビンさんを振り返ってみても、彼女も怪訝そうな顔でルッチさんを窺うばかり。
少しばかりそうしていて、ちょっと居心地が悪くなった頃、「アア、そうか」と何かに納得したかのような声が。

「おいで」

「え、あの」

「おいで、ハルア」

……異論は認められないようなので、手招きされるがままにルッチさんの元へ。
そのままひょいっと抱き上げられて、お膝の上へ移動。

「俺の言い方が少々まずかった。あの女もハルアも勘違いをしているようだ」

頭を撫でてくれる手が気持ち良くて、ついつい緊張が解けてルッチさんにもたれかかりそうになるのを堪えると、見抜いたように腕を引かれてルッチさんに背を預ける形に。
ロビンさんと目がぱちりと合うと、困惑した目で一歩前へ。
自然にお腹あたりにまわされた腕に気付いたころには、ロビンさんは更に一歩前へ。

「私とその子が、勘違い?」

「ああ。この子は当然、もうあちら側…海賊ではない」

「海賊です!あちら側です、ひぎゃあ!」

反論した途端に後ろ首に噛み付かれ、あまりの衝撃につい「ごめんなさい!」と謝ると、ぽんぽんとあやすように叩かれる頭。
なんだか、ものすごく流されているような…!

「…それで、続きは?」

「…ニコ・ロビン。この子は、こちら側…政府のものになる訳でもない」

「それはこの子を一般人として島に帰すということで良いのかしら?それにしてもあなたは」

「それが、勘違いだと言っている」

ロビンさんがひゅっと息を吸う音を聞いて、ぼくにも理解できずにくるりとルッチさんの方へ向き直った瞬間、唇にぶつかる冷たい何か。
う、わ、あ?

「あの麦わらのものでもなければ政府のものでもない。

この子は、俺のもの、だ」

あ、ちゅー、され、た?と気付くのと、むぎゅうっと抱きしめられるのが同時で、それに一瞬遅れて、耳元で「愛している」と低い声。

「ハルア、心配することは、何も無い」

何度目かのその言葉は、優しい優しい抱擁と共に、ぼくを閉じ込めてしまった。
それでも怖いとも嫌だとも思わないのはどうして?

「ルフィさん」

ぽつりと口から零れた名前は、真っ黒のスーツに押し潰されて消えてしまった。


そうだ、きっと出会い方を間違えただけ。


みしり
第二車両の天井と、第三車両との間の扉が同時に音を立てた。



あとがき
うきゃあああああああ
く ら い っ !!
とあるお客様との間で盛り上がった内容だったんですが、いざ文にしてみると、まあ重いわ暗いわルッチさんが狂気っぽいわで大変でした。
れ、連載とのギャップ…!デレ100%のルッチさんどこ行ったの…!
このまま行くと確実に監禁フラグ。ひい!ヤンデレやないか…!

本当は列車内での戦闘やエニエスロビーでの決戦も入れたかったんですが、何をどうやっても纏まってくれなかったのでここまで。
それにしても楽しかったなあ!←
連載と違ってグイグイいけるんで楽でしたからね。本編でも「俺のもの」なんて言える日は来るのかしら…。心配になってきた…。

八鹿様、遅くなってしまいましたがやっぱりドが付くほどのシリアスになっちゃいました…!
八鹿様にいただいたもののようにギャグで進めたかったのに、ヤンデレ気味ルッチさんの猛攻に耐えきれず、このような有様に…。orz
それでも管理人はお腹いっぱいになるほど楽しんで書かせていただいたので、何とも言えない満足感でほくほくしちゃってます。俺様で鬼畜で病んでて変態なルッチさん美味しかったですむしゃあああ!!どうもご馳走様でーす!
管理人:銘


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