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後ろを振り向けば、仕事を終えた船大工たちがぞろぞろと着いて来る。
その中にはもちろんカクとパウリーの姿もあり、カクは昼休憩の時のようにニヤニヤとバカにするように笑っていやがった。

ハルアのこともあるので、今日はいいですと声を上げても無視。
踏みとどまろうとしても後ろの奴らに背を押され、ぐいぐいと無理やり歩かされる。
本当に何がしたいんだとイライラしているうちに見慣れた店に着いてしまい、最後の抵抗も背中を蹴られて無駄に終わった。(誰だ今のぶっ殺すぞ)

「ルッチはここに座れ。他の奴らは分かってるな」

「アイスバーグさん、いったい何が」

「ルッチさん!」

「!!!」

これまた無理やり、なぜか店内の中央の椅子に座らされ、アイスバーグは周囲になにやら指示を始める。
訳が分からず立とうとすれば、聞こえてきたのはこんな状況でも心臓を跳ねさせる声。

「し、失礼します!」

「!!」

また背を向けられるのではないかと肝を冷やしたが、その小さな体はこちらに寄って来たかと思うと、よいしょ!と椅子に座る俺の膝に上って来た。(!!)
今までに無かったことに驚くと同時に爆発しそうになる感情を抑え付け、おそるおそる同じ高さにあるハルアの顔に目を向ける。

「むむむ!さらに失礼します!」

「!!!!!」

視線のぶつかったハルアは予想外に笑顔で、嫌われたのはやはり誤解だったのかと安堵した瞬間、ぐんっと引き寄せられる俺の頭と近付く黒いエプロン。
むぎゅうっ!
そんな音が似合いそうな動作で、視界が黒に染まる。
ゼロ距離で香る太陽と林檎の甘い香りに、ハルアに頭を抱え込むように抱き寄せられたのだと理解した。

「ちょっとこのままで我慢してくださいね、ルッチさん」

「今だー!ちゃっちゃと動けお前らー!」

「急げ急げ!早くしないとルッチが暴走するからなー!」

突然のことにハルアの背に腕を回すことすらできず、今の状態にくらくらしながらもなんとか自我だけは保ってみせた。
そこで気付いたのは、林檎と太陽に混じって、さらに甘く香る何か。
情けなくも蕩けかける思考でやっと思い出したのは、バニラの香る生クリームと甘酸っぱいイチゴの匂い。
それで連想されるのは。

「ケーキ…?」

「完了しましたアイスバーグさん!万事準備OKです!」

「よし…もう良いぞハルア」

俺の呟きは他の奴らの声にかき消され、いきなりぱっと離れてしまう愛しい気配。
開けた視界に数度まばたきし、抱きしめられる前と変わりない笑顔のハルアと視線がまたぶつかる。
先ほどよりも赤くなったその顔に心臓が跳ねて、もう一度とその身に頭をすり寄せようとした、が。

パアアアアアアンッ!
「「「ハッピーバースデイ!ロブ・ルッチ!!」」」

「…は?」

店中に鳴り響いた破裂音に身を固めたが、目に映るのは色とりどりのカラーテープと紙吹雪。
…ハッピーバースデイ?

「もしかせんでも忘れとったじゃろ、おぬし!」

「ンマー!そっちの方が都合は良かったがな」

ぱっと壁にかけられたカレンダーを見れば、今日、6月2日には赤い花丸マーク。
そして壁中に飾られた花飾りや鎖飾り。
ハットリを模したつもりなのか、紙を切り抜いた白鳩がいくつも貼り付けられていた。

「俺とハルアが1日かけた力作だ。心して食えよ」

奥から姿を現したブルーノの手には、おそらくは店で一番大きな平皿に乗せられたケーキ。
ハルアから香ったものと同じ匂いが店内に広がり、どんと置かれたのは俺の正面のテーブル。
周りを見渡せば、どこを見てもニヤニヤと笑う男共。
ただ、未だ俺の膝に乗ったままのハルアだけがへにゃりと可愛らしく笑って見せてくれた。

「おめでとうございます、ルッチさん」

生まれて来てくれて、本当にありがとうございます。
そう言ってまた笑うハルアに腕を伸ばす。
ありがたいことにその小さな体は俺のすぐ傍にある。

ああ、生まれてきたことを喜ばれるなんて!!
20年以上前の今日という日に、こんなにも感謝する日が来るなんて!!


6月2日・今日は何の日あなたの日!

Happy BirthDay
Rob・Rucci!!




「クルッポー!」
「ルッチさーん!」
「ハットリ、ハルア…!!」
「え、おい、俺何も知らされてねえんだけど…!」
「パウリーは顔に出そうじゃったからな」
「ええええ…!?」
「ンマー!今日は無礼講で騒ぐぞてめえらあああ!」
「「「おおおおお!!」」」
「(俺の誕生日関係無く騒ぐ気だなこいつら)」



あとがき

おめでとう!おめでとう!!
絶対にこの日は祝うんだ!とサイト開設時から決心していたので、無事にお祝いできて一安心です。
少年は料理の仕上げのためにさっさと帰ってしまい、計画を知っているカクさんにはニヤニヤされ、これまた秘密を知っているハットリさんに気まずい態度をとられるルッチさん。
ガレーラの皆にはたくさんワインなどのお酒をもらったことでしょう。
みーんなあなたが大好きなんですよ!
管理人:銘


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