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「湯に浸かりながらよくそれだけ飲めますね。ぶっ倒れられても困るんですけども」
「こんな量で酔えるかバカもん。いっそワイン風呂でもやってみんか」
「葡萄は絶対やりませんけど、柚子ならやりますよ」
「冬至の柚子湯じゃろそれ。つまらんのう、本部の浴場でやってみんか?」
「やる訳あるかバカが!」
センゴクさんの声は風呂場によく響くが、そのエコーのかかったお叱りの声にもガープさんは豪快に笑ってばしゃりと湯をはねさせる。そしてその間にもまた新しい徳利が現れた。ちょっと、それどこから出てきましたか。
「早く酒盛りやめないと、他のお客さんが来たら面倒ですよ」
「心配せんでも、最近はワシらの船が港についとる間は誰も近寄らんじゃろう」
「さらっと営業妨害ですね。七武海の御三方の時もそうですけど」
ん、そう言えばあの人たちはまだ誰も来ていないじゃないか。
腕時計の曇りをはらって見てみれば、いつも1番乗りのミホークさんが来ていてもおかしくない時間。
この状況であの3人が来たら余計面倒くさそうだなあ。
「あいつらなら今日は来れんぞ」
「え、そうなんですか」
「『招集に応じないとチアキに言うぞ』と言ったら鬼の形相で現れた」
「知らないところで思いっきり名前使われてるんですけど」
「ワシらはこっそり抜け出してきてやったわ。今ごろ悔しがっとるじゃろうな、あのチンピラの若造どもめ」
またガハハハ!と笑うガープさんの言葉に、え……とセンゴクさんを見れば、全力で手を振りながら「抜け出したのはそいつだけだ!」と否定された。
勝手に人の名前(しかも、一般人の番頭如きの)を使って、そのくせ抜け出してみたり(ガープさんだけらしいが)して、その上酒盛りときたか。
どんだけ自由なんだ。フリーダムすぎて一般人の俺には理解しかねるなこりゃ。
「はい、とりあえずお酒はおしまいですよ。さっさと体流してあがらないとさすがに逆上せますって」
「そんな柔な体しとらん!なあセンゴク!」
「さっさと片付けろ!まず飲むのをやめろ!」
ぶうぶう言いながらも、ここらへんに良い酒を飲める店はないかと聞いて来るガープさんに、呆れを通り越して悟りを開きそうだ。きっとセンゴクさんも早く開いてしまった方が精神や血圧のためだろうに。
まだ飲むのか…と思いつつも、近くの飲み屋を教えてやった。おじさんごめん。一応は上客だから許して。
「チアキ、電伝虫が鳴いてるぞ」
「え、あ本当だ」
予想していたより数の多かった徳利(いやよく持ち込んだな…)をかちゃかちゃ片付けるセンゴクさんに言われて気付いたが、番台に乗せている店の電伝虫が鳴いているようだ。
軽くマットで足を拭いてから自分の定位置に駆け寄り、まだかまだかと鳴き続ける電伝虫の受話器を取り上げた。
「はい、大海の湯で…」
「フフフフ、俺のラブコールに随分と待たせるじゃねえか」
あ、切ろう。
「おいチアキ、牛乳用意してろよ」
「え、クロコダイルさんもいるんですか」
「俺もいる。今日は普通の牛乳にする」
「おいおい横からうるせえなあ」
「ミホークさんも?ちょっとちょっと、あなた達って招集かけられて聖地にいるんですよね」
「終わらせた」
終わらせたってあなた。終わった、じゃなくて。
あとあなた達の声が大きいものだから、それを聞きつけたセンゴクさんがすごい目でこっち見てるんですが。怖いんですが。
あ、あ、こっち来た、受話器取られた。あ、耳栓しとこう。
ちなみにあなたも今日は叱られる立場なんですけどね。空気を読んで言わないでおきますけど。
回数券1000円・洗濯物と酒の持ち込み禁止
「チアキ−!牛乳とって良いかー!」
「お前らどうせろくに議題も聞かずに!!」
「センゴクー!お前コーヒー牛乳じゃったか!?」
「お前らはどこまでも海のクズ…普通のだ!!」
「耳が痛い…」
あとがき
以前からリクエストをいただいていた、「入湯400円」と「牛乳150円」の続きでした!
前回のものでちらっと出てきたセンゴクさんとガープさんとの絡みでしたが、ガープさんちょうフリーダム…!絶対に真似しちゃいけないと言うかできないと言うか。
リクエストしていただいていた御二方、遅くなってしまいましたが本当にありがとうございましたー!まさか2つも続編を書けるなんて…。番頭さん恐るべしです。
管理人:銘
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